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日々/今日も君は…
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日々/稼業-1

2月10日(土)
少々度が過ぎて君を失神させてしまった。君を寝具へ運び、私は近くの机で読書をした。程無く君は目を覚まし暫くぼんやりしていたが、陽も暮れていたので夕飯の準備をしようと身を起こした。
「今夜はいらんぞ。そろそろ出かける時間なんでな。」
私は本を閉じて君を見上げて言った。君も腹が空いて無かったのか、部屋の隅の箱を空け、画材等を入れてガラガラと音をさせた。

私は支度を済ませ、今夜は少しばかりの遠出の為、水筒に水を用意して家を出る。穂立の背中を二度叩き飛び乗って、西へ向かい走った。
食って行くには金がいる。金を得る為西へ行く。別段な野心も特別な志も無く、少ない時間で金を得るには、私には手っとり早い手段だった。

金は後払い。一人で動く私に大物の仕事は先ず来ない。都合が良かった。大物は金は良いが危険も大きい。確実な仕事をしているから、金はそれなりの額を貰う様に成っていたし、生活に苦労が無ければそれで良かった。

現地付近に到着してコウノトリと接触した。コウノトリは穂立の綱を取り、
「この先のT字の右角の飲み屋に居ますから。」
と言った。私は返事をしないでその飲み屋付近で酒を購入し、石に座って飲み始めた。丁度買った分を飲み干す頃にその男が出て来た。三人で出て来たが、一人とは飲み屋の前で別れ、死に街道をフラフラと行き始めた。

その男の連れは千鳥足だ。帯刀が格好だけの、姿勢も成って無いカスだが、その男の足取りはそこそこ正常だった。繁華街から外れたので、後ろから距離を縮めた。

楽な仕事の部類だった。その男を切り倒し、即死の手応えは十分だった。色を失った連れが逃げようと、足を絡ませながら叫んでいる。
「五月蝿いな。」
と声を掛けてやってから首を跳ねた。

その道の先の路地を入ると、コウノトリが待っていた。返り血を浴びる為、何時も上着を用意してある。
「馬に水をやっておきましたから。」
相変わらず気の利く男だった。私は無言で穂立の綱を取り、乗った。コウノトリが軽く会釈をしたのを合図に歩を進め、家路を急いだ。

夜風は強く私を通り過ぎ、月は随分と明るかった。
(後少々で春か。)
坂道を下りながら、何となく思った。


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