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『暖かい雪』
【純愛 恋愛小説】

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『暖かい雪-2-』-1

スキーで銀世界を堪能した俺は夜、宿に帰った。

「あら、お帰りなさい。もうそろそろ夕飯出来ますからね。」

家のように出迎えてくれる女将さんに礼を言いながら、やはり民宿にしてよかったと俺は思った。


部屋に戻り、畳に寝転ぶ。
目を閉じて、俺は一人物思いに耽る。



昨日出会った娘・清水舞子は、宿の娘ではない。
なぜなら、旦那と女将の名字は、清水ではないからだ。

なら、さしずめここでバイトの家事手伝いといったところか。


思考をやめ、上半身を起こす。

「……。」
耳をすませてみても、下から聞こえてくるのは旦那と女将のやり取りだけ。

他の客が風呂にでも向かうのだろう、スリッパを引きずったような音も混ざっていたが、肝心の娘の声はいっこうに聞こえてこなかった。

まだ、学校から帰っていないのだろうか。
部活などは、やっているのだろうか。
彼女はどうしてこんな民宿で、バイトなどしているのだろうか。

もしかしたら今日は、ここへは来ないのかも知れない。
知らない間に出たため息を掻き消すように立ち上がって、部屋の窓際に寄った時、下からあの声がした。

「ただいまー。おばちゃん、夕飯どう?」
「あぁ、もう出来るから大丈夫だよ。」

舞子が帰って来た事は、すぐにわかった。
一階に降りて行きたい気持ちを抑え、俺はそのまま立ち止まっていた。


民宿でありながら、希望者には食事を賄ってくれるこの家は、常に台所から温かい食事の匂いがする。

それはそうと、俺は自分に問い掛ける。
どうしてあんなにあの娘が気になるのか、と。

年も10離れていそうなくらいの少女だ。
この頃よく耳にする、ある単語が頭をよぎった。

「まさか。…伊豆の踊り子じゃあるまいし。」

口に出して苦笑いすると、階段を昇ってくる足音が聞こえ、我に帰った。


慌てて畳の座敷に腰をおろし、そばにあった新聞を引ったくって適当に開いた。

「水沢さーん、夕飯お持ちしましたよ。」
襖の向こうからかわいらしい声が聞こえ、舞子が中に入ってくる。

「あぁどーも……あれ…?」
彼女の姿を見た瞬間、俺は思わずそう言ってしまった。

舞子が着ていたのは高校の制服などではなく、どう見ても黒のスーツだったからである。


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