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ある看護婦とある患者
【制服 官能小説】

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ある看護婦とある患者-1

「樋川さん、行くわよー」
「あ、はーい」
私は今年の春から、この市立E総合病院に勤める事になった樋川美和子です。小さな頃からの夢でこの仕事に就きました。両親からは、早く結婚しろと言われますが…。
あるとき、指導係の正岡先輩からこんな事言われました。
「樋川さんは、本当に白が似合うわねぇ。穢れを知らないお嬢さんって感じで」
「はぁ…」
確かに、両親は私を過保護に育てたので、そう言われます。おまけに、父は欲しい物は何でも私に買い与えてくれました。
けれど逆に、その環境が私を独立させる原因となったのかも知れません。私は高校を卒業した後、家を飛び出して看護学校に入ったのです。
「私ずっと女学校で過ごしてましたから、そう見えるんじゃないんですか」
「そうかもね」

実は私の『性』に対する経験は、ほとんど皆無で、『穢れを知らない』という部分も、あながち、外れてはいなかったのです。

「渡部さーん、点滴交換ですよ」
「あっ、ミワちゃんだ。おはよう」
この方は、渡部さんといって、正岡先輩の担当患者さんです。
女性好みの顔立ちで、話すととても気さくな人でした。割と私とは仲が良く、渡部さんは私をあだ名で呼んでいました。
正直言うと、恋愛経験が乏しい私は、優しくしてくれる彼に、少しだけ恋心を抱いていました。
「渡部さん、気分は悪くなかったですか」
「ああ、もうすぐ退院だからね。ミワちゃんは病院に慣れた?」
長話になるのをを止めさせようと、正岡先輩が会話を遮りました。
「さっ、樋川さん、行きましょ」
「えぇ〜。ミワちゃんだけ置いていってよ、正岡さぁん」
「ダ・メ・です」
「じゃあまた…」
「さみしいよ〜」
私がクスクス笑いながら病室をでると、正岡先輩が、
「樋川さん、気をつけてね。あの人、女の子をひっかけて遊んでる事で有名なのよ」
と、含み笑いをしながら教えてくれました。
「そうなんですか」
私は、少し意外な気がしました。

その夜、帰り際に私は渡部さんに貸す約束だった本の事を思いだしたので、帰りのミーティングが終わった後、すぐロッカールームに本を取りに戻り、白衣のまま渡部さんの病室に行きました。
「渡部さーん……」
ドアをそっと開けると、渡部さんはすやすやとうたた寝していました。
私は本を置いて帰ろうと思い、そっとベットの傍のテーブルに近づきました。
渡部さんは相変わらず寝ています。
私は、男の人と会話した経験があまりありませんでした。それでつい、寝入っている渡部さんの顔に見入ってしまったのです。
形のよい眉毛に少し彫りが深い目元、すっと通っている鼻筋、優しそうな口元……。上手く説明できませんが、女の人なら、誰もが一度はときめくはずの顔立ちです。
私がしばらくの間、ドキドキしながら見つめていると、ゆっくりと渡部さんが目を開けました。
「…ミワちゃん?」
「あ……、起きちゃいましたか。ごめんなさい…。これ約束の本です」
「ああ、ありがと」
「それじゃ」
渡部さんは突然、私の手をつかんで引き留めました。
「も〜、渡部さんってば…」
苦笑いする私をぐいと引っ張り、もう片方の腕で私の肩を引き寄せました。
突然の渡部さんの行動に、私の心臓は早く脈打っています。


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