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紅の嫉妬
【サスペンス 推理小説】

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紅の嫉妬-2

仕事が終わり、寮の部屋に戻ると私はいつもボーっとするかテレビを見るかだ。食事はというと、基本的にコンビニだが、工場のおばさんがたまに料理を作ってくれるので助かる。おばさんは私に興味があるのかいつも私に聞いてくる。


「天根さんって、どうして家追い出されたの?」


「どうして学校退学になったの?」


「どうしてこんな所で働いているの?」


私は聞かれたくない事をしつこく聞かれるので、たまにキレる。


「黙ってメシ作れよ…」


冷たい言葉を吐いた後、タンスを足でおもいっきり蹴る。おばさんは悪気があって言っているわけではないので、これ以上は出来ない。


あれからもう2年も過ぎた。私はいつしか街には出掛けなくなり、服も適当になり、化粧もしなくなった。


あの頃にあった孤独感はしだいにどうでもよくなり、工場のおばさん達にも少しずつ打ち解けていくようになった。私は過去を捨てて、生まれた時から工場で働いていたとまで思うようになっていた。


気付けば、工場のおばさん達に私の過去はバレていたようだ。だが、実は皆、暗い人生を送っていたそうだ。借金や元罪人など、みんなそりゃ楽しそうだった。だから私が居場所を失うことはなかった。
まだ19の私にとって、青春なんていらなかった。ここが私の居場所なんだから…。


そんなある日の事だった。


仕事が終わった後、私は工場長に呼ばれた。


「なんですか…?」


「天根さん、昨日君の両親がウチを訪ねてきてねぇ。是非、君に会いたいと言っているんだが、どうかね?まぁ君の事情は知っているから、無理にとは言わないが…。」


両親……?


そんな言葉、久しぶりに聞いた気がする。私に怒鳴るだけ怒鳴って、殴るだけ殴って、追い出した奴らの名称…。


もう…他人なんだから、用なんてないだろう…


会う必要なんてないだろう…


「私には、親なんていません…。」


工場長は私がそう言うと、黙ってうなずいた。


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