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夢の雫
【ファンタジー 恋愛小説】

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夢の雫2-2

ゴンッ

「はぐあっ!」
重田に足を引かれ、神山はコンクリートの床に叩きつけられた。
打ちつけた顎がじんわりと熱くなる。
それはたしかに痛みを感じた。
「なぜこんなことをしようとした!自殺がどういうことかわかってんのか」
めんどうなことになった、と神山は思った。
自分が不死身だからそれを試すためと言っても決して普通の人は理解してくれない、
であったら頭の堅い重田なら尚更だ。
神山は諦め、適当な理由を探すため思考を巡らせた。
「月を見ていたんだ。そしたら危うく手を滑らせそうになってね」
「…そう、なのか。たしかに裕介が自殺を考えるとは思えないが」
うーんと重田は筋肉が八割を占める脳味噌で考えた。
常人であれば考えるにも到らない嘘を彼はまるでヒエログリフを解読するような勢いで思考する。
「剛は僕を信じてくれないんだね…所詮僕達の16年間なんて在ってないようなもんなんだ…ああ!」
「違う!違う!違う!そんなことはない!俺達は親友だ!」
重田は神山を慰めるというよりは、自分に言い聞かすように叫んだ。
「そう言うのって、口だけなら何とでも言えるよね」
ふふっと神山は寂しげに笑う。
自分を自嘲するように、とても寂しげに。
もちろんそれは演技であるが。
「……わかった。俺を殴れ!少しでも裕介を疑った俺を殴れ!殴って殴って殴って気の済むまで殴ってくれ!」
神山を不安にさせたことは重田にとって在ってはならないことだった。
だから彼は筋肉が八割を占める脳味噌を何とか絞り出し、殴って解決という、彼にしては名案を編み出したのである。
もちろん現実では殴って信頼を回復するシステムはない。
「メロスかよっ!」
夜の病棟に神山のツッコミと一発のビンタがこだました。



「ここね」
一人の少女がまるで城壁のようにそびえ立つ病棟を見上げている。
彼女の名は神島ほのか、今が盛りの女子高生である。
綺麗に纏められたポニテールにキリっと締まった目、どちらかと言うと凛々しい感じの美人だが巫女装束に身を包み、街を徘徊するその姿はまさに絵に描いた変人であった。
今が真夜中でなければ確実に好奇の目に晒されていたに違いない。
(あれはどう考えても異能者の仕業、やっぱり間違いはなかったわ)
ほのかは夜風の吹く病院内の庭へと足を踏み入れた。
真夜中二時過ぎ、病院の敷地内は無音であった。自分自身の足音さえ大きくなることに眉をしかめた。
しばらく歩き、ようやく病院の建物に入る扉の前までやって来た。その扉に手を掛ける。
その瞬間だった。
「君」
「何?」
ほのかが後ろを振り返えると、初老の警備員が彼女を不審な目で見ていた。
たしかに巫女装束で病院に入り込もうとしている者はあまりに怪しい。
「公務執行妨害!」
ほのかはそれだけを言い放つと、札を一枚警備員の額にくっつけた。
「説明するのも面倒だわ。朝までゆっくりおやすみなさい」
警備員は二、三歩前へ後ろへフラフラ歩くと、地面に突っ伏した。


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