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「ゆりかごのある丘から」
【二次創作 恋愛小説】

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「ゆりかごのある丘から」-2

「昔話をしよう。昔、この丘には毎日のように二人の若い男女が来ていた。二人は幼馴染で、歩き始めた頃からよくこの丘で遊んでいたものだ。風景は今とほとんど変わっていないだろうなぁ。草原には優しい風が吹いていて、草花たちがワルツを舞っていた。ん、いや、今よりももっと草花たちがいきいきとしていたかもしれない。鳥たちの賛美歌を蜜蜂が運び・・・とにもかくにもここは美しく、のどかで、平和な景色がいつもあった。今もそうだがね。このゆりかごも昔のまま、ここにあったんだ。彼女は確か、このゆりかごに腰を下ろして・・・彼はこうして木の根元に座ったり、彼女の腰掛けたゆりかごを揺らしたりしていた。彼が彼女の髪を優しく撫でると、風に彼女の髪の香りが混ざって、彼を包み込む。そうすると彼はきまって彼女の髪にキスをした。



 時にはここを待ち合わせ場所にして、市場へ出かけたり、海へ出かけたりもした。休みの日は彼女がお昼を作ってきたりして・・・でもたいがいは夕方学校や仕事が終わってからここで落ち合っていろいろな話をしていたんじゃないかな。そうだな・・・例えば・・・街での噂話、仕事や勉強の話・・・そして二人の将来のこと。話題は尽きなかったろう。



 しかしあるとき、となりの街で大きな戦争があった。この街は直接の関係はなかったが、援軍を要請された。生きて帰れる保障はないが、戦争に協力すれば結構な報償金が貰えるとのことだった。彼は考えた。この戦争に勝って、報奨金を持って帰り、晴れて彼女と結婚しよう、と。もちろん彼女は反対してね。それでも彼は彼女をふりきり、必ず生きて帰ることを約束して戦争に出かけていったんだ。



 彼を初め、この街の人々もみんな、この戦争は三年くらいで終わるのではないかと読んでいた。が、三年は四年になり、四年は五年になって、みるみるうちに七年の月日が流れた。彼は援軍であり、途中で戻ることも可能だったのだが、やはりひとつ手柄を上げれば、また一つ、と、欲がでるものらしい。男っていうのはどうもそういうところがあってな。サガっていうやつだ。それはまぁいい。彼女は手紙を書いた。そのくらいしかできなかったんだろう。せっせと手紙を書いたが、何しろ混乱していて、結局彼の手に渡ったのは一通だけだった。



そして七年後、彼の応援していた国は見事に勝利を収め、彼も功績を称えたものとして、その国の英雄となり、それなりの報奨金を貰ってやっと帰ってくることができた。



この街に帰ってきた日、彼はこの丘を登り、ゆりかごに腰をかけた。ここから見渡せる街は、七年の歳月が流れていたが、あまり変わりなく、彼はそのことに心からの安心を覚えた。あとは隣に彼女が来てくれさえすれば・・・



しかし彼がここから見た景色は残酷なものだった。不運なことにね、見えたんだ・・・窓に、彼女と寄り添うようにしている友人の男の姿を。彼は確か、彼女の髪に手を伸ばし・・・彼女は窓際に座っている男の方へ顔を近づけた。その光景はまさに幸せそのものだった。



彼は絶望し、この草原に倒れこんだ。

日が暮れて、月がでて、夜露が彼の髪を濡らしても、彼は起き上がらなかった。きっと彼はいろいろなことを考えていたんだろう。この丘での楽しい思い出、彼女の手紙、今の彼女、これからの自分。


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