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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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恋人達の悩み9 〜secretly concern〜-11

「……意味、分かってます?」
 困った風にそう言うと、美弥は唇を尖らせた。
「分かんないのに、こんな事言えるように見える?」
 どうやら本気らしいと悟り、龍之介は肩をすくめる。
 美弥がその気になっているのなら、龍之介に異存はない。
 異存はないが……何かが引っ掛かって、素直にそれを喜ぶ気にはなれなかった。
 だがこの寒空の下で美弥の態度の理由を探るのも虚しいため、とりあえず寒気を避けるために部屋をとって転がり込む事にする。
 ――その通りで目についた適当なホテルへ、二人は入った。
「むっ!?」
 部屋に入ってドアを閉めるか閉めないかのうちに、美弥が爪先立って龍之介の首にかじりつく。
 そのまま自身の体をよじ登るようにして唇を奪われたため、驚いた龍之介はくぐもった声を上げていた。
 いつもと変わらない柔らかい唇が割れ、温かく湿った舌が伸びてくる。
 体をかがめてキスに応えながら、龍之介は違和感に顔をしかめた。
「シャワーは?」
 唇が離れた隙に、龍之介はそう尋ねる。
「いい!」
 即答されてしまい、龍之介は絶句した。
 コトの前後にはきちんと体を洗いたがる美弥がシャワーをいらないと言い出すとは……やはり、異常である。
「ちょっとごめんよ」
 足元を掬い、龍之介は美弥を抱き上げた。
「きゃっ」
 反射的に首へしがみついた美弥の体をきちんと支え、龍之介は室内を横切ってベッドまで移動する。
 
 ぼふっ
 
 放り投げるようにしてやたらと広いベッドに美弥を落とすと、龍之介はまず靴を脱がせた。
 離れた場所に靴を投げると、自身も靴を脱いでから美弥の上に覆いかぶさる。
「何があったか、話してみ?」
 逃げられたり抵抗されたりしないように手足を絡めつつ、龍之介は尋ねた。
「や。何も……」
「嘘つけ」
 美弥の呟きを一刀両断し、龍之介は言う。
「二年も付き合って色々分かってる相手に嘘こいたって、すぐにばれるのは予想つくだろ?」
 言われた美弥は、目線を横に流した。
「ん〜?怒らないから、話してみ?」
 こちょこちょと首をくすぐりながら、龍之介は言う。
 くすぐったそうに眉をしかめると、美弥は唇を開いた。
「あの、ね……」
「うン?」
 体を捻り、美弥は龍之介の胸に顔を埋める。
 そんな美弥を優しく抱き締めると、龍之介は先を待った。
「瀬里奈が、輝里ちゃんに言ってたんだけど……ね」
 言う事を躊躇ったのか、美弥の頭がふるふる揺れる。
「一体、何のために恋愛してるのかって……それ聞いた時、考え込んじゃって」
 美弥を安心させるべく、龍之介は抱き締める力を強めた。
「あの時、龍之介を支えてあげたいって思った……それは本当だし、今でもその気持ちに嘘も偽りもないよ」
 美弥はいったん言葉を切り、こう付け加える。
「支え切れてるかどうかは、別にしてもね」
「……」
 個人的な意見よりも美弥に喋らせる事の方が重要と考えた龍之介は、何も言わなかった。
「で、色々考えてたら訳分かんなくなっちゃって……してみたら、何か分かるかなぁって」
「……」
 抱擁を解いて体をずらし、龍之介は美弥の顔を覗き込む。
「……つまり、それが僕と付き合う上で不都合だと?」
 言われた美弥は、ぶんぶん頭を振った。


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