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堕天使と殺人鬼
【二次創作 その他小説】

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堕天使と殺人鬼--第5話---1

 頭の中に描かれる、あの頃の彼女の笑顔。――自分のしたことは、過ちだろうか。





オリジナル・バトル・ロワイアル

堕天使と殺人鬼 --第5話--
〜最後の平和篇〜





 無表情な横顔から視線が剥がせられない――水樹晴弥(男子十七番)は、美吹ゆかり(女子十六番)の美しすぎる顔立ちを眺めながら過去の出来事を思い出して、いつになく沈んだ気持ちを整え直すことができなかった。
 あれ以来、状況は益々悪くなる一方だった。女子不良グループの面々が彼女を孤立させただに留まらず、守護する者のいなくなった彼女に更に陰気な虐めをするようになったのである。それにも拘わらず、誰も彼女に救いの手など差し延べなかった。大半のクラスメイトが彼女との交友を拒んでいて、驚いたことに、草野香澄(女子四番)率いる女子主流派の面々や、誰とでも程々に交友関係を築いている上野香苗(女子二番)ですら、彼女を助け出そうとしなかった。ゆかりに好意的に接する者は彼女に想いを寄せる飛鳥愁(男子一番)くらいなものであった。
 あれから、もうすでに十ヶ月が過ぎ去っている。
 愁や沼野遼(男子十一番)が男子不良グループの面々と距離を置き始めたのは最近であったが、元はと言えばこれが原因である。愁は、裏切り行為が余程許せなかったのか名波一夜(男子十番)のことは当時から完全に敬遠していたが、他とは以前と変わらず好意的に接していた。それが三年に上がって突然、不良グループの両者が仲良くなったものだがら徐々に距離を離して行ったのだ。元々、この両グループは他のグループより親しくしていたのだが、あまりの急接近さに嫌気が指したのだろう。誰だって自分の想い人を虐めている者と親しく付き合っている奴らに、好意的に接し続けることなどできるはずがない。遼は、半ばそれに付き合わされている感じであった。
 晴弥は、時々どうしても思うことがあった――自分の選択は間違いではなかったのか、と。あの時は、何が正しいことでどうするべきかなんて全く考え付かなかったが、今では少しだけ分かる気がした。
 沼野遼や名波一夜の態度の豹変から、美吹ゆかりに対して多少なりとも不信感を抱いてしまったのは事実である。しかし、あれからある程度の月日が経った今でも――どうしても、彼女に落ち度があるようには思えなかった。これは所謂、根拠のない確信である。
 実際、晴弥の考慮を裏付けるかのように、都月アキラ(男子九番)や林道美月(女子十九番)といった面々も、同じようなことを思っているようだった。ただ未だに遼がゆかりに対する態度を改めなかったので、晴弥たちも行動に移せずにいたのだった。唯一美月だけは、晴弥たちほど遼との交友がなかったためか、最近になって少しずつ、ゆかりに対して積極的に接するようになった。だがら今回、二人は同じ座席に座っているのだ。自分も――本来なら美月と同じようにするべきなのだろう。
 晴弥は漸く、ここでゆかりから視線を逸らした。
 ふと周りを見ると、先程まで身を乗り出してこちらと雑談していた愁と遼の姿がない。どうやら愁の機嫌を直すことができなかったようだ。隣のアキラは、美月と何やら話し込んでいる。ただ両者のその顔に微笑が浮かんでいることから、話の内容は悪いものではないことが予想できた。


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