「お引っ越し」-1
「では、鍵お渡しします。」
不動産の方がにっこりと微笑む。
しかし、この二人の顔は笑っていなかった…
田町あずみ。主婦（28）
田町まさる。亭主（30）
今、この二人の壮絶なバトルがゴングを鳴らそうとしている…
カーン…
「ここのソファーはそっちじゃないって言ってるでしょー」
あずみの先行おたけび攻撃。実況は私、空の声が担当します。
「そこにおいたらパソコンが置けなくなるだろおぉぉ」
まさるはソレをかわした！
「パソコンなんてどうせ出会い系しかやらないじゃない！」
あずみの鉄拳！いやぁこれはごもっともですねぇ
「何いってんだっ…し、仕事で…」
まさるは守備力が下がった！確信をつかれたんでしょう。
「だからソファーはここっ」
あずみ、すかさずソファー権獲得。
「くっ…ならばここはゆずれんっ」
まさるは趣味のプラモデルを取り出した！
「テレビの前に置いたら画面見ずらいでしょー」
再びおたけびを使うあずみ！
「ばかやろぉぉ」
まさるの喝！が入る！
「プラモを見つつテレビを見ると言う、コラボのコンボを知らないのかっ」
まさるさらに責める！
「しっしらないわよ！邪魔だからダメ…」
「夢のコラボ実現を邪魔はさせーん！さもないとお前のヘソクリは返さんっ」
おーっとまさる割り込んだ！そして封筒をちらつかせる！
「うっ…なぜそれをあなたがっ」
「たまたまな…さぁ…どうする？」
まさるの睨み攻撃。
「くぅっ」
あずみにクリーンヒット！まさるプラモ権獲得！
「ならばっ寝室はここの部屋にしましょう！」
「うん。いいよ〜」
「あらそぅお？」
二人で笑う。同意見らしい…
「じゃあっここ物置部屋に…」
「それはならーん！」
「ちっ」
なごやかムードで事が運ぶと思いきや、一転暗雲が立ちこめる！
「物がごちゃごちゃになっちゃうじゃない」
「いらないものは捨てればよかろう！」
「でもまだ着る服とかあるし」
「もうMサイズは着れない現実を見つめろ！」
あー…致命的意見ですね…
「なんですってえぇ」
嗚呼！あずみのバックに炎が見えます！
戦闘力も計り知れません！
「着れるっていってるでしょぉぉ」
「しまった！」
まさる、防ぎきれません！
「いいからここは物置！それからあれはあそこ！これはこっち！今日中に片付けなきゃいけないんだからすべこべ言うな！」
「はっはいぃっ」
……決まりましたね。
あずみの圧勝です。
一時はまさるかとも思いましたが、死のキーワードを言ってしまったのが決め手ですね。
何はともあれ、引っ越しは大変な作業ですね…はい。
みなさんは和やかな引っ越しをなさってくださいね。
では、私はこれで…
Fin