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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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恋人達の悩み 〜Obstacle Girl〜-12

「なっ……覗いてたの!?」
「あぅ……」
「なんか騒いでるから様子を見に来ただけだ!帰るよ!!」
係わり合いになるのはごめんだと、龍之介は美弥の手を引いて踵を返す。
「っ……待ちなさいよぉっ!!タダ見する気!?」
「こんな所で騒いでるあんたらがいけないだろっ!」
「やかましいっ!!見物料払いなさいよっ!!」


どーしてこうなったんだろーか……。
九割くらい呆然としながら、美弥は買って来た化粧品一式と缶ビールやチューハイと共に瀬里奈のクレジットカードをテーブルの上に置き、ベッドに腰掛ける龍之介の傍へ行った。
「ありがと」
クレンジングのボトルを取り出し、瀬里奈は崩れた化粧を落とし始める。
――ここは、ファッションホテルの一室。
ヤケになった瀬里奈に二人が負ける形で、何故だかこんな場所に連れ込まれた。
「あーさっぱり!」
化粧を落とし切った瀬里奈はすっきりした顔で、呆然としている二人を見る。
「ごめんね、付き合わせて……」
瀬里奈は缶ビールを開け、中身を一気に煽った。
「っぷう……!」
瀬里奈の理解不能な行動に、美弥は頭を抱えたくなる。
「……フラれちゃったんだぁ」
ビールとチューハイを三本くらい空けてから、瀬里奈はぽつんと呟いた。
「二回り以上も年が離れてるし、妻子持ちだし……結ばれるはずがない……そんなのありっこないって、分かってた。でも真剣に、好きだったんだよぉ……」
声が、涙混じりになる。
「だから横に並んでも違和感ないように、こんな派手な格好と化粧して……頑張って……」
ぽろっと、涙がこぼれた。
「でも一番ムカつくのはねぇ……別れるのはあたしのためだなんて、あいつが自分をごまかしてた事よ!!!」
今度は叫ぶ。
「あたしのためじゃなくてあたしに飽きたって、ちゃんと言いなさいよぉ!!優しさと自己欺瞞を混同するな!!卑怯者おぉ!!!」
さらに吠える。
「美弥……」
美弥は傍らに座り、龍之介に寄り添った。
「馬鹿ああぁ……!!」
酔いが回って来たのか、今度は泣き出す。
トラに手はつけられないが、かといって見捨てて部屋を出るには忍びない。
「悔しいわよ悔しいわよ悔しいわよおぉぉぉ!!」
美弥は龍之介にしがみつき、龍之介もまた美弥を抱き寄せた。
「あんまり悔しいからそこらの幸せそうなカップルぶち壊してやったんじゃないぃぃぃっっ!!!」
「あ〜、それで急に近付いて来た訳ね……」
呟いた龍之介に、瀬里奈は座った目を向ける。
仲良く寄り添う二人を見て、瀬里奈がわんわん泣き出した。
「どぉしてあなた達はそんなに仲がいいのよおっ!!?」
二人は視線を合わせる。
仲良くなるきっかけは美弥が男二人に犯されようとしている所を龍之介が助けるというとんでもないものだったし、互いの恋を自覚してからは体を結び付けるのも早かった。
ごくたまに喧嘩もするが口だけの言い争いがほとんどで、時間経過と共に馬鹿らしくなって笑い出して終わってしまう。
「……何でだろ?」
言われてみると、確かに仲がいい。
「心と体の相性がいいんだろうな」
「じゃああたしは悪かったって言いたいのねッ!?」
瀬里奈が食ってかかり、龍之介は額を押さえた。
薮蛇である。
「……浮気させてやる」
ボソッと、瀬里奈が呟いた。
「浮気させてやるううぅううっっ!!」
言うが早いか瀬里奈は椅子から立ち上がり、龍之介へ組み付いて来る!
「のわあああああっっ!!?」
美弥以外の女の子に抱き着かれた気色悪さと驚いたのとで、龍之介は悲鳴を上げた。
「っ……やめっ……!どけえっっ!!」
龍之介は怒鳴るが、さすがに女の子へ手を上げる事はためらわれて積極的な反撃ができない。
美弥はあまりの出来事にただ唖然とし、硬直してしまって役には立たない。
「っぎゃ!!」
股間を触られ、龍之介はあまりの気色悪さに背をのけ反らせる。
「ほら勃ちなさいよおぉ!!」
「ハイそうですかって、勃つ訳ないだろッ!!こんな気色悪い事ッ!!!」
虚を突かれた瀬里奈は、動きを止めた。
「…………伊藤さんとしてないの?」
問う瀬里奈に、龍之介は叫ぶ。
「してるよ!訳を知りたきゃ離れてくれっ!!」
瀬里奈は……離れた。
「っあ〜……さぶイボが出た……」
心底ホッとした様子の龍之介は、まだ固まっている美弥の頬をむにゅっと引っ張る。


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