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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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恋人達の悩み 〜Obstacle Girl〜-1

その日は、朝から忙しかった。
家中を綺麗に念入りに掃除し、クリスマスらしい赤と緑を基調とした飾り付けをする。
「龍之介……後は俺がやるから、美弥ちゃんを迎えに行けよ」
兄の竜彦は弟の熱中ぶりに、とうとうそう言った。
「そろそろ時間だろ?後は俺がしてやるよ」
「でも兄さん……」
今夜はディナーの予約がぎっちり詰まっていて、昼前から夜中まで殺人的スケジュールをこなさなければならない竜彦を使うのは、気が引ける。
「いいから。待たせて、愛想尽かされる気か?」
美弥に捨てられる事が、何より恐い龍之介だ。
そう言われると、龍之介は目に見えて慌て始めた。
――そういう弟の変わりっぷりが、竜彦には微笑ましい。
「ほら行って来い。家に帰って来る頃までには、飾り付けは済ませとくから」


そして、つつがなく終業式が終わる。


バッグにお泊りセットを始めとする諸々の物を詰め込み、美弥は自分の部屋を出た。
「……お泊りか?」
自分の部屋から顔を出した兄の貴之が、羨ましそうにそう言う。
「うん。明日は、帰って来ないかも」
母は美弥が『彼のとこに泊まって来る』と宣言しても、自分に後ろ暗い所があるので何も言わなかった。
「そっか……」
彼女のいないクリスマスを迎えた貴之は、ひょいと頷く。
「頑張って来いよ」
「うん。頑張って来る」
美弥は笑みを見せ、家を出た。
吹き付ける冷たい風が、体をぎゅっと縮ませる。
「寒っ……龍之介、待ってるかな」
美弥はバッグを持ち直し、高崎家へと移動した。


「はい、特別サービス。お子様シャンパンと、ハーフボトルのワインよ」
ラ・フォンテーヌのソムリエール、西崎はにやにや笑いながら二人の前に小さいバッグを出した。
バッグの中には細身のボトルと小さいボトルが二本、行儀良く収まっている。
――試食した際に美弥が一番気に入ったバタークリームのブッシュ・ド・ノエルとワインを一本、龍之介は予約していた。
自宅で美弥と合流してから、二人でそれらを引き取りに来たのである。
「フルボトルなんか飲み切ったら、酔ってタツ物もタタなくなるだろうしね。親切と思って、受け取りなさい」
「はぁ……」
四十半ばを過ぎた女傑(独身。未婚)のご意見に、龍之介は口元を引きつらせた。
「まぁ、酒マラ湯ボボとも言うから……風呂入ってワイン飲んで、徹夜でお楽しみよ!お楽しみ!!」
がっはっはと大口を開けて笑う風情は、さしずめ肝っ玉母さんといった所である。
「美弥……」
真っ赤になっている美弥を、龍之介は気遣った。
「あ、美弥ちゃん。ヒニンはしなさいよ!泣くのは女なんだから!」
「あぅ……」
美弥は、首や耳まで真っ赤に染めてしまう。
龍之介は美弥を抱く時にその辺はちゃんと気を使ってくれるが、美弥当人が感じ切って心も体も痺れて来ると、生でも何でもいいからとにかく欲しくて堪らない。
龍之介がゴムを装着する前に腰を動かして、自ら挿入してしまう事がしばしばあった。
だが……そのリスクがスリルとなって、そういう時には上り詰めるのが早いのも事実である。
あと二年か三年程したら低用量ピルを必ず飲んで、龍之介にどばどば中出しして貰おうというひそかな野望を、美弥は抱いていた。


そして、その夜。
用意したご馳走を綺麗に平らげ、お風呂にも入って準備を万端に整えた二人は、龍之介の部屋で抱き合っていた。
部屋のテーブルの上には中身の綺麗になくなったワインボトルとグラス、ケーキを食べるのに使ったフォークと小皿が並んでいる。
部屋の隅ではオイルヒーターと加湿器が、稼動していた。

ちゅっ、くちゅっ、ちゅるっ……

パジャマ姿の龍之介は、ベッドにもたれた美弥のワイン風味の唇を、情熱的に吸い立てる。
「えっち」
唇を離した龍之介が耳元に囁くと、美弥はぴくんと体を震わせた。
「ん……」
「最初からブラジャーしてないなんて、美弥のえっち」
耳元へ囁きながら、龍之介は美弥も着ているパジャマ越しに乳首を引っ掻く。
「ぅんっ……」
「こんなに堅くしちゃって……」
パジャマの上から突起を優しくつまむと、美弥は喉の奥で声を漏らした。


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