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オーディン
【ファンタジー その他小説】

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オーディン第六話『下剋上』-3

真っ暗闇の森の中、ガサガサと音をたてながら武装した男たちが歩いていた。先頭には軍服を着たフォールディングの姿があった。
「止まれ」
フォールディングの合図で皆一斉に立ち止まる、目の前には大きな洞窟が口をあけて待っていた。フォールディングは無言で男たちに指示をすると、2人の部下を連れて堂々と正面から洞窟へ歩きだした。
「止まれ」
洞窟の前にいる8人の兵士が、フォールディングたちに銃を向けた。
すると、フォールディングと2人の部下は瞬時に姿を消した。驚いた兵士が隣りの兵士に声をかけようと振り向くと、そこには兵士たちの死体が転がっていた。
「な、何!?」
突然後ろから、鋭いナイフが兵士の首にあてられた。
「トロッコまで案内してもらおう、拒否権はない」
フォールディングがそう言うと、草むらから武装した男たちが出て来た。その光景を目にした兵士は、小さく頷きフォールディングたちを洞窟の中へと案内した。
洞窟の中にはたくさんの線路が張り巡らされていた。フォールディングは兵士から地図とライトを受け取ると、兵士を気絶させ、議事堂の真下まで走って行った。

朝8時…
議事堂には背広を着た男たちが集まっていた。皆楽しそうに何か話している。
「今回の法案は素晴らしい」「我々に逆らった者はいかなる理由があっても許されない」
男たちが座る席には一枚一枚紙がおいてあった。そこには
「新聞に反政府的な記事を載せる事を禁じ、載せた場合死刑とする」
と書かれていた。
皆が席につくと審議が行われた。審議に時間はかからず、新聞に関する法案は全会一致ですぐに通ってしまった。
「それでは明日からこの法律を施行したいと思います」
もさもさした白髭をなでながら、台の上に立っていた老人がそう言った。
部屋の扉が開き、皆が帰ろうとしたが、扉には武装した男たちが立っていた。
「動くな、動くと撃つぞ」
「き、貴様ら!!こんな事をしてただでは済まされんぞ!!」
パン、乾いた音とともに背広を着た男が倒れた。頭から赤い液体がとめどなく流れている。
「あなたがたを殺す為に来た訳ではない、この地位から降りてもらう為にここへきた」
武装した男の間からロックが姿を現した。右手には本をもっている。
「ロック、貴様我々を裏切るつもりか!!」
背広を着た男たちは、ロックの姿を見て動揺し始めた。
「この地位から皆退いてもらう、背広についているバッチと王の認定書を置いて行け、逃げる者は、殺す」
ロックの鋭い目付きに皆その表情が凍った。睨む者、生気を失った者、いろんな者たちがバッチと認定書を置いて、議事堂をでていった。
ロックは最後の一人が出て行くのを確認すると、トランシーバーでフォールディングに連絡を入れようとした。
「つながらない…」
ロックは眉をひそめると、部下にバイクを持ってくるよう伝えた。
部下の持ってきたバイクに跨がると、ロックは議事堂の線路につながる扉を破り、走っていった。
作戦では扉を出るとフォールディングたちがいるはずだった、しかしその姿はなかった。ロックはバイクのスピードを上げる。
洞窟の終わりを告げる光が見えてきた。今まで誰とも会っていないが、出口には一人誰かが立っていた。
「フォールディン…」
ロックは急いでバイクを止めた。立っていたのはフォールディングではなく黒いコートを着た男だった。ロックは銃を握った。
「誰だ」
「俺?俺の名前はロキ、反乱軍を皆殺しにしろって言われてね」
ロキと名乗った男のコートは血に濡れていた。
「皆殺しだと?」
ロックは男に銃を向けようとした、しかし腕を男に向けただけで、いつの間にか銃は地面に落ちていた。
「銃使えるんだ、俺も銃使えるんだ、2丁ね」
ロキの銃はロックに向けられていた。ロキはゆっくりロックに近付くと耳元でささやいた。
「見逃してやるから外の死体片付けといて」
「…き、貴様!!」
ロックは地面に落ちた銃をひろいあげた、しかしその時ロックの頭には、既にロキの銃が突き付けられていた。
「ここまでか…」
「おやすみ」


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