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月蜜
【ファンタジー 官能小説】

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月蜜-1

「そうか、もう来たのか・・・」
王を示すマントと立派な銀糸で縫われた服を身に纏う青年は悲しげに呟く
暗い闇夜には無情な顔をした、白い満月が浮かんでいる。

 静寂は断末魔によって破られる。
その声が聞こえたところに人が集まるが、そこに残るのは無惨にぼろ布のように引き裂かれた、哀れな骸が一つ転がっているばかり。そうして骸を確認した人々は、何事も無かったかのように立ち去ってゆく。
 それはいつものことだから
 それはこの白い満月が浮かぶ夜に幾度と無く繰り返されてきているから
 それは別にたいしたことではないから
 それはむしろ人々にとって喜ばしいものだから
 それは・・・・

「今夜の犠牲者は?」
雪のような白い肌を持ちながら、闇夜のようにどこまでも深い黒い髪を後ろにまわし、同じように澄んだ黒い双眸を持つ若き王は、玉座から兵を見下ろした。
頭を深くたれたままの兵は落ち着いた姿勢で、ゆっくりとその問いに答える。
「はっ、今回の犠牲者は、広場の噴水の下で発見されたそうで、名前はヘクル=ウツリュ、12件の詐欺と、5件の強姦殺人の罪で指名手配されていた者だそうです」
「罪人か」
「はい、しかし、奴は剣においても上手な者だったそうで、まさかあっけなく倒されるのは不思議なようで・・・手口も今までとおりなので犯人は以前の事件と同じように同一人物でしょう」
淡々と兵は告げる。犠牲者は、いつも罪人、指名手配者。そしてぼろ布のようにされた状態で発見される。
「もういい、死体は灰にして、葬っておけ」
「御意」
そのまま兵はさがる。玉座の間には、王ひとりとなった。王はため息をひとつつくと、そのまま寝室に向かう。

 寝室の窓は無用心にも開いていた。いや、開けていた。
侵入してくる風で何度も何度もふわりとカーテンが風になびいた。そのカーテンのなかに人影が見える。王はそれを確認して安心すると、口元に笑みを浮かべた。
「羅鬼、戻ってきてるんでしょう。でておいで」
玉座の間にいたときの雰囲気とは打って変わって幼さが漂い、口調はやさしい。その声に反応するように影は姿を現す。羅鬼と呼ばれた青年は、王と同じ闇夜のように漆黒の髪、瞳は王と違い金色に輝く。そしてその姿は王よりも背が高く、短髪の髪を逆立てた、凛としていた。その青年の手や顔のあちこちには返り血が飛び散っていた。そこから、殺人を犯したのは彼だとわかる。しかし、それも気にせず、王は片手を限界まで伸ばすと、自らよりも背の高い羅鬼の髪をクシャっとなでた。羅鬼がそれにわずかに反応した。眼底に反射する月光が揺らめく。羅鬼の腕がゆっくりと王の腰の部分に回り自らのほうに引き寄せる。王はその力に抗うことをせず、身を任せた。そのまま羅鬼は王の首筋に顔を近づけると舌を這わせる。
「ひゃう・・・・はあ・・・・・」
王はその感触と温度にくすぐったさと快感を覚える。相変わらずこの行為には慣れない。
熱い舌が生き物のように這い、首筋に輝く道筋をつける。しばらくして羅鬼の口が少し開く。その口から2本、他の歯よりも形も大きさも異なる牙が上顎に現れた。それは、唾液で濡れた首筋にゆっくりとつきたてられる。
「あ・・・」
先程の舌の攻めによって体中の力が抜けてしまった上に、鋭い牙を立てられた王はその苦痛に身をよじる。しかし羅鬼の腕は一向に力を緩めず、むしろ強まっていった。牙で穿かれた穴からは血がゆっくりとあふれ出る。それを舌は器用にも漏らさないように嘗めとっていく。その嘗める音は淫靡さを醸し出している。羅鬼の息は、血を嘗めていくたびに荒さを増していった。王は首筋に伝わる熱と快感と苦痛に耐え切れずうっすら涙が滲み、息も絶え絶えになりながら、羅鬼の背中に腕を回して体を縮こませた。
 それに気づいた羅鬼は、その行為を止めた。無作法だがやさしく王を抱き、やわらかい褥の上に横たえさせる。ベッドが、主の重みでゆっくりと上下に揺れた。それに続くように羅鬼もベッドの上に乗り、王の上に乗ると、王の上着に手をかけた。ゆっくりと、ボタンが外され王を示すものが脱がされてゆく、王はそれを知りながらも、顔を赤面しながらそむけた。
その頑丈な服の下からこぼれでたのは、淡いピンク色の蕾を宿した、なだらかな双丘だった。普段雄々しく勇ましい力を放つこの王は、女なのだ。ピンク色の蕾は、外気にさらされるのと恥ずかしさで、ぴんと自らを立たせ、主張させていた。羅鬼は再び彼女の首筋に牙をたて、血を嘗め始めた。そして片方の手で双丘を、蕾が手に触れないように、そっと揉む。そして余ったもう片方の手で己の上着のボタンを取りはずしにかかる。
月に照らされた部屋の中で聞こえるのは、血を嘗める音と2人の荒い息だけ。そうして羅鬼の服が脱げ、今度は、彼女の下の服を脱がそうと、手が彼女の体を這う。それと同時に、首筋の血を止めると、羅鬼の舌は段々と下へ下がり始め、手が触れていない片方の丘へと進み、蕾を口に含み、甘噛みを始めた。もう片方の丘に咲く蕾も指で摘み、弾く。
「はぁ・・・・・・・はぁん・・・・・はぁ・・・・・あぁん・・・・・・・羅っ・・鬼・・・・・・・・・あん・・・・・あっ・・・・・・」
彼女は迫りくる快感の波に耐え切れず、甘い声を放つ。両腕が抵抗するように羅鬼の頭をのけようとするがびくともしない。もしも、誰かがその部屋の前を通ったら怪しむだろうという心配を尻目に・・・・・王が女だということは、他ならぬ王自身と、羅鬼、そして一部の者しか知らない。それ以外のものに知られると、この国の沽券にかかわるのだ。


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