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『gradual advance』
【失恋 恋愛小説】

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『gradual advance』-1



携帯を、換えた。
別に前の携帯でも不便じゃなかったんだけど、今機種変更すると割引してもらえるらしかったので、つい衝動的に換えてしまった。
携帯ショップから出た俺は真新しい携帯を取り出す。せっかく新しい携帯に換えたんだし、どうせなら心機一転、メールアドレスも変えてしまおう。ものの2分で、今まで使い続けたアドレスが新しいものに変更された。さて、アドレスを変えたこと、みんなに教えないと意味がない。俺は携帯を開き、メモリーに登録しているアドレスに片っ端からメールを送り始めた。だが、俺の指はある名前のところまで来て止まってしまった。

『松木香苗』

ディスプレイに表示されているのは、4日前に別れたの彼女の名前。別れた理由はなんてことはないすれ違い、勘違い。だけど俺は意地張って素直になれなくて、そのまま2人の関係は壊れてしまった。本当は、別れたくなんてなかったのに。できることならやり直したい。でも俺はいきなりそんな話ができるほど器用じゃない。
別れてから一切連絡をとっていないせいで、俺は彼女にメールを送ることをためらってしまう。でも、ここで立ち止まっていたら何も始まらない。携帯を換えたのもアドレスを変えたのも、本当は不器用な俺でも前に進めるきっかけが欲しかったからなんだ。進もう、前に。俺は意を決して文章を打ち出した。

『携帯とアドレス変えました。変更しておいてください。健司』

…今の俺はこれが精一杯だ。でも今はこれでいい。少し前に進めたから。これから少しずつ進んでいけばいい。

『送信完了』

俺は携帯を閉じると、寒空の下で、前に歩き出した。




突然携帯の着信音が鳴り響いた。ディスプレイには見知らぬアドレスが表示されている。私はメールを開いた。

『携帯とアドレス変えました。変更しておいてください。健司』

…アドレス、変えちゃったんだ。私はアドレス変更のために健司の前のアドレスを表示させる。

『k-with-k@…』

「k-with-k」健司の「k」と香苗の「k」こうして彼のアドレスに私の名前が入っているだけで、私はとても幸せだった。でも、もうこんな文字上ですら、彼と一緒にはいられない。
別れた理由は本当にささいなすれ違い、勘違い。だけど素直じゃなかった私は、彼に別れを切り出した。本当はずっと一緒にいたかったのに。それからずっと後悔して泣いてばかりいた。今からならまだやり直せるんじゃないかって思ってたのに、拒絶されることが恐くて先延ばしにしてた。その結果がこれだ。健司はもう、私のことふっ切ってしまったんだろう。アドレスを変えて、私にメールしてきたってことはそういうことなんだと思う。私は健司のアドレスを新しいものに入れ替えた。

『k-advance@…』

advance…前進…か。健司はもう新しい道を歩き出してるのかな。そうなんだとしたら、私もいつまでも立ち止まってられない。これはいいきっかけを健司にもらったのかもしれない。私も新しい道を歩き出さなきゃね。

『アドレス更新したよ!これからもよろしくねo(^-^)o 』

今はまだこれくらいしか言えないけど、いつかもう一度彼の隣を歩きたいから。…だから私も前に進もう。

『送信完了』

健司と一緒に歩ける日を夢見て、私は前に歩き出した。

end


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