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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)
【コメディ 恋愛小説】

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ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)-41

「皆さん、本日は学園祭実行委員会主催のライブに来てくれてありがとうございました。今日の結果は集計完了後、翌日の校内放送とこの会場にて発表致します」
司会をしていた安奈が今後の予定を観客に向けて話していたが一方、舞台袖ではただならぬ空気が漂っていた。
「ケイ、さっきはありがとう。あそこでケイが抱き留めてくれなかったら恥ずかしいどころの騒ぎじゃなかったわ」
「まぁね…でも、香織ちゃんにケガがなくて良かったわ」
余程恥ずかしかったのか、香織ははにかむ様に笑いながらケイを見つめていた。
「ん、何? 香織ちゃん」
「しっかし、ケイってばこんなに細いのにすごい力よね。コケそうになったあたしをそのままお姫様抱っこしちゃうなんて」
「ま、まぁ、普段そこそこに鍛えてるから……」
香織の言葉にひきつった笑いで答えるケイの後ろに加奈子が現れた。
「お陰で観客には大ウケだったわ。二人共ありがとうね」
「てか、加奈子ちゃん、あの時の指示って全部計算済みだったの!?」
「さあ、一体なんのことかしら? 私にはわからないわね…」
そう言うと加奈子はニヤリと笑ったのだった。
「それにしてもあんなことをする奴は大体予想はついてるけど本当ムカつくー!」
ケイの前では香織がステージでの仕掛けを思いだして激怒していた。
どうやら香織は今回の一件が美弥によるものだと判断したらしいのだが、今までの香織と美弥の確執を考えれば当然と言えなくもない結論だった。
「でも、あの子の性格を考えればこの程度は予想の範囲内だったんじゃないのかなぁ」
一人で荒れる香織に気付いた未歩が話しかけると香織は憮然とした表情で未歩に答えた。
「まあ、何かされるってのは想定内だったけどやっぱり腹が立つわ」
「でも香織はそのお陰でケイにお姫様抱っこされたじゃない。このことに関しては私だけじゃなく実際、かなりの女の子達に羨ましがられたわよ」
「ま、まあね…確かに役得って言ったら役得なんだけどね……」
未歩の言葉に頬を染めながら香織は歯切れの悪い返事をした。
「でもやっぱり、あいつにはなんらかの形で借りを返さないとね」
物騒なことを言い出し始める香織をケイが慌ててその発言を制止した。
「待って、香織ちゃん。気持ちはわかるけどこれ以上騒動の火種を大きくしなくてもいいんじゃないかしら。ほら香織ちゃんにもケガはなかったし、それにライブも成功したんだから」
ケイの必死な説得に不承不承ながらも香織は「ケイがそう言うならいっか」と一応納得をしてくれた。
 
一方、舞台袖とは場所を違えたステージ裏に千晶と竜二の二人がいた。
「まあ、なんだ…その、お疲れさん」
ステージ衣装の千晶から微妙に視線を逸らし、少し照れた様子を見せながら竜二は千晶を労ったのだった。
「ありがとう、東谷くん。私、今日は目一杯がんばったよ」
「そうだな、俺から見ても今日のお前はがんばってたよな。敢闘賞もんだ」
相変わらずの態度な竜二に対し、千晶の表情はとても晴れやかな笑顔で竜二を見つめていた。
「でもね…私、実は今日のステージまでに何度も逃げたくなって仕方がなかったんだ……」
「榎本…」
急に俯き話始めた千晶に竜二は真面目な顔になった。
「本当はライブに出るつもりなんてなかったんだ。だって、私って人前に出るの苦手だし…」
千晶の言葉が微妙に震えているのを竜二は感じていたが黙って聞き続ける。


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