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『欠片(かけら)……』
【大人 恋愛小説】

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『欠片(かけら)……』-1

「ここってどこだっけ?」

 身体の中に気怠い火照りを残しながら、あたしはぼんやりと見覚えの無い天井を見つめていた。ふと、人の気配を感じて隣りを見ると寝息を立てる男がいる。室内に不釣り合いな大きなベッドで、一つのシーツをあたしとその男は二人でかけていた。

「そっか……ホテルに泊まったんだっけ」

まぁ、ここも一応ホテルよね?男女がみんな同じ目的の為だけに泊まるホテルだけど……

そんなコトを考えながらベッドの中で伸びをしてから、ゆっくりとベッドを抜け出すと枕元の時計を見る。午前7時……

素足のまま窓際まで歩いて小さな窓から見上げると、まるで不安定な今のあたしの気分みたいに空はどんよりとしていて、軽い目眩にあたしは二、三度頭を振った。

「ヤッバイなぁ……昨日のお酒がまだ残ってる。どうせなんにも着てないんだし、このままシャワーでも浴びようかな?」

独り言をつぶやきながら、そのまま浴室に行くとタオルで軽く髪を纏めて少し熱めのシャワーを浴びた。だって髪の毛濡らしちゃうと面倒だしね。

浴室を出て服に着替えて軽めのメイク。ここまでの所要時間は約30分、あたしはすっかり身支度を終えたけど男はまだまだ白河夜船。

「はぁ……呑気なモンね……」

どうせ、ホテル代はコイツが払ったんだから放っておいてもいいんだけど、あたしも楽しませて貰ったし一応、声だけは掛けておこうかな。

「ねぇ、あたし先に行くけどあなたも遅刻しないでよ?」

軽く鼻をつまみながらあたしがそういうと、フガフガ言いながら男は片手を上げた。これで良しっと……さて、じゃあ仕事に行こうかしら。


 そのまま堂々と正面玄関から外に出たあたしがもう一度大きく伸びをしていると、向こうから来る通勤途中のOL達と鉢合わせた。そいつらはあたしの方に冷ややかな視線を投げると嘲笑を込めた顔で通り過ぎる。

ハッ、上等じゃん!あたしは自分の欲望に正直なのよ!文句ある!?

一応、勢いよく啖呵を切ってみたけど、その数秒後にはそんなコトは忘れて更に数十分後には職場に到着していた。更衣室のロッカーにはいつも一揃いの着替えを用意してあるから、それを丸ごと手にするとあたしはトイレに駆け込む。

まぁ、服だけなら更衣室でいいんだけど下着までってなるとさすがにね……でも替えないと気持ち悪いし……

だから下着の上からは嫌だって言ってんのにさ、変なDVDの見過ぎなんじゃない?まったく男って何考えてんだか……

なんてひとしきり愚痴りながらも着替えを済ますと、あたしは自分のデスクのPCを開いて煙草に火を付けた。

さて、始業時間にはまだ早いしコーヒーブレイクがてらに自己紹介など。あたしの名前は宮原 澪(みやはら みお)25才OL。
以上、自己紹介終わり!
ん?そんだけかって?
そうだよ?

性格とかは、後々わかるってコトで……
おっと、始業時間だ。今日も頑張りますか。


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