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あおぞらと君へ。
【純愛 恋愛小説】

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あおぞらと君へ。-1

暖かな陽気に誘われ、そよ風と共に眠気が運ばれる昼下がりの午後。
オレはそんな十月の小春日和の効力をいちばんに受け、閉じるまぶたを手でこすりなんとか持ちこたえる。
しかし、ホントに暖かいな…寝ちゃおうか?と何回も妥協しかけるほどいい天気で。見上げた空は気持ちがいいぐらい青い。
けどそんな寝ぼけ眼をなんとか保っていられるのは、「もう、だらしがないんだから…」と『アイツ』がジト目を向けているから眠りたいものも眠れないわけなのだが。
……いや、違うな。訂正。
だから、そんな人を寝かせてしまうような、今日を晴れにしてくれた誰かがいたとしたら頭を下げてでも感謝したいぐらいだ。なにしろ最近はすっきりとした天気ではなかったからなおさらそう思う。
オレはそんなことを考えながら、目の前のアイツをみつめ、「よかったな。おまえの好きな青空になってくれてさ」と頭に手を置いてやった。
その時の、気持ちよさそうに目を細めて撫でられている顔は、しっぽをぶんぶんと振っている犬みたいで正直かわいい。だからオレは照れ隠しに髪をくしゃくしゃと乱暴に掻き乱し悟られないようにする。ああっ、ほんとっカワイイな〜!!
そうするとアイツは乱暴にやっているからか、「ああもう!乱さないでよバカ〜!」と両手で頭をガードして、オレから逃げ頬を膨らませる。
その後そんな子供のようにそっぽを向くアイツを宥めるのはいつも苦労させられるけど、まあそれもオレの楽しみの一つー ーーーだった。
「…………」
そう。『だった』んだ。 目を細めて恥ずかしそうに撫でられるのも、頭を押さえて逃げるのも、つんとそっぽを向いて怒ったふりをしてオレが宥めるのを途中でやめると、逆に心配そうに顔を覗き込んでくるのも。
それはアイツがすることで。今目の前にいるコイツはなにもしてくれなくて。
「そりゃそうだ。墓石なんだもんなぁ」
と、笑いながら墓石に話しかける。
そんなオレの行動は傍から見れば、イタい人…とは思われはしない。むしろ可哀相だなと同情してくれると思う。だってここはそんな人が来るところだから。
今日は命日。
アイツが死んだ日で、アイツが天界に殴り込みに行った…ちょと違うか。
だから今日は晴れてよかった。
「な?」
もう一回アイツー墓石にぽすっと手を置く。
そうして返事がないってわかっているのに、声が返ってくるのを待っていると、もういないってまた現実を知らされると、
「なんだかな…」
やっばり悲しくて、今にも泣き叫びたくなって、おまえの名前を何回も呼びたくなって、オレの名前を何回ー一回でいいから呼んで欲しくて、だから何回も話しかけて、
「今、思うとすげーヘタレ」
なんて思っていたのはもう昔のこと。
「今はもう大丈夫。だからおまえは安心して寝てろ?おまえの大好きな、まんじゅうはオレが腹いっぱい食べといてやるからさ」
だからそんなことも言える。後者は生前冗漫で言ったら「一人でずるい!」と本気で怒るので、これもある意味今だから言える言葉。
そして、そんな昔のこと思い出すと前まで涙で顔を濡らしていたのに、今は頬が緩んでいる。
多分こうゆうのを、ふっきれた、と言うんだろう。だから、
「今日はお別れを言いにきた」
オレとおまえが出会ったのは、三年前の高一の春、席替えでオレの隣になった時。そして惹かれあい、いつしか恋人になった。
そして高二になった今日、おまえはあっさり天国に行きやがって。おれはその時の悲しみを抱え、やっと今のオレになった。


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