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あなたにレケナウルティアの花束を
【初恋 恋愛小説】

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T〜港町に咲くインカルビレア〜-5

「いっぱい逢いました…」
「でしょう?もうそんな無茶な真似はしては駄目よ。それに親御さんに何も言わずに出てきたんでしょう?きっと心配しているわ」
「そうですよね…やっぱり……でも私どうしても我慢できなかったんです!世界はこんなにも広いのに、それを知らないまま、生まれた村しか知らないまま一生を終えてしまうのが」
「……………っ!」
「どうしたんですか?」
「い、いえ、何でもないわ…と、ところで私達がこうして出会えたのってインカルビレアのおかげだと思うの」

クィレルさんはまたさっきみたいな表情を一瞬見せたが、すぐに元の表情に戻して話を変えてきた。
私はまたクィレルさんの触れて欲しくない所に無意識の内に触れてしまったんだろう。

「確かにあの時ぶつからなかったら、私がここにいることはなかったんですよね〜」
「いえ、そうじゃなくてね、もちろんそれもあるのだけれど、インカルビレアの花言葉は『運命的な出会い』なの。だからそれのおかげかな、って」
「『運命的な出会い』ですか〜素敵な花言葉ですね」
「そうでしょう?このコンタットの町にピッタリ。ところで『運命的な出会い』といえば、ティアちゃんには好きな人とかいなかったの?」
「な、なにいきなり変なこと言ってるんですか!そんなものいませんよっ!」
「動揺するところなんかが怪しいわね」
「ど、動揺なんかしてません!」
「ふふふ、本当にそうかしら〜?」
「もう勘弁してください…」



その後しばらくからかわれた後、私は自分が寝起きする部屋に案内された。

「ここが今日からティアちゃんのお部屋よ。長い間使ってなかったからちょっと汚いけれど、我慢してね」
「そんなことないです!とっても素敵なお部屋です」

隅にベッド、真ん中には小さなテーブルと椅子が置いてあるだけの簡素な部屋ではあったが、掃除は隅々まで行き届き、部屋に唯一ある窓からは優しい陽光が降り注いでいて、私が新しい生活を始めるのには十分過ぎるくらい良い部屋だった。
テーブルの上の一輪差しには真っ赤なレケナウルティアが生けられている。

「そう、気に入ってくれたのならよかったわ。仕事は明日からやってもらうけれど、花屋の朝はとても早いから覚悟しておいてね」
「はい…頑張ります」
「それじゃあおやすみなさい」
「おやすみなさい」


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