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Poor Clown
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続・Poor Clown-2

忌々しげにフィルタ近くまで吸ったタバコを踏み消し、僕はコートのポケットから携帯電話を取り出した。短いメールを素早く送る。
送信画面を確認して、新しいタバコに火をつけた。

冬。
命が眠る死の季節。
新たな生を育むために命は眠る。
いっそのこと、僕もこのまま眠ってしまえれば楽なのに、と間抜けなことを考えながら、くわえた煙草を右手で挟んで煙を吐い──て、苦笑した。
フィルタに穴が開いている。どうやら犬歯が貫通してしまったらしい。アルコールのまわった脳で把握している以上に僕は動揺してしまっているようだ。

その瞬間、右手を突っ込んだポケットが震えた。
そのまま右手で携帯電話を掴むと背面ディスプレイで発信元を確認し、風穴を開けたショートホープをくわえ、通話ボタンを押し込んだ。

「もしもし?」

少し怯えたような口調だったのはおそらく返答を予想していたからだろう。

「お前、明後日暇やろ?」

異物をくわえたままのくぐもった声で僕が言うと、彼女は一瞬沈黙した後ではい、と答えた。きょとん、として目を丸くしている彼女の顔が容易に想像できる。

「俺ん家来い。いいな?」

「え? あ、はぁ…わかりました」

言ってる意味がわかりません、と言うような口調。それでも僕は有無を言わせない。

「じゃあ、そんだけ。お疲れ」

あ、はい、お疲れ様です。
受話器の向こうでそう言い終わるのを最後まで聞き、僕は通話を切った。
32秒。
長くはないよな。
少し一方的過ぎたことを後悔しながら携帯電話をポケットに仕舞う。
そして更に後悔したのその一瞬後。

──どうしたもんかな。

勢いで返答の日を決めてしまったものの、何も考えられていない自分がそこにいた。あまりの馬鹿さにため息が漏れる。

家に帰ろうとは思わなかった。肌を刺す冷えた大気も悪くないように思えたのだ。
僕は夜の街に体を溶かした。明後日──12月24日に、自分が吐く科白を探して。


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