投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ヴァンパイアプリンス
【ファンタジー 官能小説】

ヴァンパイアプリンスの最初へ ヴァンパイアプリンス 8 ヴァンパイアプリンス 10 ヴァンパイアプリンスの最後へ

ヴァンパイアプリンス2-4

空はすっかり暗くなっていた。
「あれ?もう6時半?」
月下が携帯の液晶を見てそう言った。
「…さっき5時だったのに。」
「あぁ。家の時計、よく止まるんだ。古いから。」
宏樹は月下の手を握る。月下は少し驚いたが、すぐに笑顔で腕に絡み付いた。

「あッ!スゴい!屋台いっぱぃッ」
しばらく歩くと、お祭りらしい提灯飾りや、屋台が見えてきた。
月下は目を輝かせながら、前方の屋台を見つめる。
「お祭りって見てるだけで楽しいッ!宏樹、連れてきてくれてありがと!」
月下は嬉しそうに笑った。
「どういたしまして。でも、お礼を言うのは俺の方だょ?」
月下がきょとんとした顔をする。
宏樹は微笑んだ。
「…俺の彼女になってくれてありがと」
月下は思いがけない言葉に目を見開く。
「…何言ってるの?あたしも思ってるッ」
そう言って月下は、宏樹の手を引く。
「お祭りは楽しまなっきゃ!!」

二人は屋台を物色し、お祭りを楽しんだ。

「ん〜ッ…やっぱり夏はコレ食べなっきゃ!」
月下は川原に腰掛けてかき氷を頬張る。
「月下。もうすぐ、花火やるょ」
「ホント!?風流だね」
月下はかき氷を食べながら、花火に想いをはせていた。
かき氷を食べ終え、月下は宏樹の隣に座る。
「あ!始まった!」
ドーンという音と共に、空がパァっと明るくなる。漆黒の空に光り輝く花が咲いた。
「…キレイ。」
月下は宏樹にピッタリ寄り添った。
「うん…」
再びドーンと花火が打ち上げられる。
「俺さ…」
宏樹が月下の肩にもたれかかった。
「月下に…すごく感謝してる。」
パァっと空が明るくなり、花火が宏樹の悲しそうな顔を照らす。
「血もそうだし…俺の彼女になってくれた事も…俺を人間として俺を見てくれる事も。ホントにありがとう」
月下は、宏樹の手をそっと握った。
「何言ってるの?宏樹は宏樹だょ」
月下は宏樹の手をぎゅっと握り、それ以上何も言わなかった。

空にはいくつもの花火が咲いては散り、咲いては散りを繰り返していた。

月下は気付いていた。宏樹の目から涙が零れていた事を。
「…キレイね」
月下が呟く。
「…ああ。」
宏樹はそう答え、涙が零れる目を静かに閉じた。

この人は優しさの下にどれだけの不安を抱えているのだろう…
月下は宏樹に肩を貸しながら、花火を眺めた。
「…また来年も、一緒に花火見れるとイイな。」
月下の呟きも、花火のように空に溶けていった。
―…
「…んッ。あ…れ?俺寝ちゃってたんだ…」
宏樹はいつの間にか月下の肩で寝てしまっていた。
花火大会はすでに終わっていた。
「ゴメン、月下。俺寝ちゃって…」
宏樹が月下の肩から頭を起こした。
―ぽすッ
「ん!?」
宏樹が月下の肩から離れた瞬間に、月下の体が宏樹にもたれかかった。
「月下?」
月下は寝息をたてていた。
「…寝てる。」
(どうしょぅ…。おんぶ?ぃゃ、浴衣だし。だっこ?ぃゃ、危ないし!…しょうがナイか)
宏樹は寝顔を見ていたいという気持ちを押さえて、月下を起こす。
「月下、起きてッ」
「んん〜ッ」
月下はしばし、抵抗をしめす。
(カワイイ…じゃなくて!)
「月下ッ、ダメだょ!起きてッ」
宏樹が再び、月下を揺さ振る。
「んッ…ぁ、宏樹…」
月下は目を覚ました。
「月下。もう時間遅いから、ウチの家泊まっていって」
「ん〜…」
月下はまだ眠いようで、目を擦っている。
宏樹は月下を抱き起こした。
「帰ろう。」
「んん。」

―…
「ほら月下ッ、着いたよッ」
「う〜ん…」
月下は宏樹に支えられながら、家に入った。
「あらあら、どうしたの?」
様子を見兼ねて、奈美が出てきた。
「悪いな、奈美。起こしちゃったか…」
「ううん。…奥の部屋に布団しいてあるから、ソコ使って。」
「悪いな…」
「イイの。…みんな寝てるし、奥の部屋だから大丈夫ょ?自由に使って」
奈美はウィンクをし、自分の寝床に戻っていった。
「…心使い感謝です」
宏樹は苦笑し、月下を部屋に連れていった。
月下は部屋に着くなり浴衣を脱ぎ、下着のまま布団に潜った。もうすでに夢の中だ。
宏樹は月下の寝顔をしばらく眺めた後、窓を開けて外を眺めた。
空で月が優しく輝いている。
どれくらい月を眺めていたいただろう…


ヴァンパイアプリンスの最初へ ヴァンパイアプリンス 8 ヴァンパイアプリンス 10 ヴァンパイアプリンスの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前