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悪魔とオタクと冷静男
【コメディ その他小説】

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パシリと文学部と冷静男-8



 階段を下りて一番近い手洗い場で、栗花落たちはうがいを繰り返す崎守を見つけた。
「……あ、ああ皆さん、あれはひどい味ですね。何だか舌がおかしくなってしまいそうでしたよっ。あの会社は何を考えてるんでしょうかね!?」
「買ってきたのはお前だろう。商品名で気付け。そして次は常識を持っていくのを忘れるな」
「そうですね、今度からは気を付けます……、って次回もすでにパシリ決定ですかっ」
「違うのか? 長谷部が唐突に訳の解らないことを言って、五十嵐がそれをたしなめて、遠矢があっちの世界に行ってる間にお前がパシリに行く。部内ではそういう役割分担が作られてるんじゃないのか」
「そんなの決まってませんよ!? いや確かに半分ほど決まってるような気もしますし、気が付いたら走り回っていますが、それは自分の人柄が良すぎるせいでありまして。と言うか強く命令されるのも意外と悪くはないような――!」
 崎守が熱く語るのを、三人とも流した。何事もなかったかのように、
「……でしたら幸一郎さんと大宅さんの役割は何ですか?」
「僕は傍観、……つばさは知らん」
「うわひどっ! 毎日毎日あんなに頑張ってフォローしてるのにっ」
 栗花落はついと顔を背けて遠い眼で、
「……だとしたら、毎日僕があんなにも疲れるのはなんでだろうな」
「ひ弱だからかと。精神的にも肉体的にも」
「だね。それか性根がマズい感じにひねくれてるからじゃないかなっ」
「……お前ら、人をけなすのだけは巧いよな」
 半眼でつぶやくと、「いえ、幸一郎さんほどでは」と「ううん、いっちーほどじゃないよ」と同時に言われた。
 二人とも当たり前のように笑顔で、悪いことを言ったなどとは少しも考えていなさそうだった。
「……まあいい、時間の無駄だ。早く買いに行くか。おいパシリ」
「であるから――、と何ですか? ってついに自分から認めちゃいましたよ!? 誘導尋問とはなかなかやりますねっ」
「うるさい。さっきのは飲めたものじゃないからまた買いに行くが、お前はどうするんだ」
「それは暗に買いに行けということですか?」
「ん、行ってくれるのか有難うさっさと行ってこい変なものは買うな不便なパシリ」
「ひと息にひどいこと言いますねぇ! しかもすでにパシリは決定事項なんですかっ」
 栗花落は無言で首を縦に振った。遠矢とつばさも。崎守はそれを見て力なくよろけたが、すぐに持ち直して、
「……誰か一緒に来てくださいよ。何度も何度もひとりだと、ふとした瞬間に寂しくて人の温もりが恋しくなるじゃないですかっ」
「何だか言い方が気色悪いから断わる。遠矢、行っとけ」
「え、何だかわたくし仮病のせいで少し体の具合が。幸一郎さんが代わりに行ってくださると嬉しいのですが」
「……つばさは?」
「んー、別にいいけど、決まらないなら皆で行けばいいんじゃないかな」
「よし全員で行こう」
 崎守と遠矢が半眼を栗花落に向けたが、本人はそんなことなど気にしない。
「……栗花落さんてちょっと変わってますねぇ」
「ええ、そうですね。崎守さんも人のこと言えませんが、幸一郎さんもだいぶ変わってますよ。特に大宅さんが絡みますと頭の中が空っぽなんじゃないかと思えることもありますから」
「……聞こえてるぞ」
「問題ありません。聞かせているんですから」
 栗花落は遠矢をにらんで舌打ちし、崎守の肩を叩いた。
「ちなみにこの遠矢は長谷部と同じくらいおかしいからな。まともに話を聞いてると脳が汚染されるぞ」
「あら、そんなことはありませんよ? むしろ幸一郎さんは扱いが大変なので、あまり構わないほうがよろしいですよ。突発性暴走症候群持ちですし」
「嘘付くなよ」
「幸一郎さんこそ事実を曲げないでください」
「これは真実だ」
「あら、わたくしも正直に言っただけです」
 二人は互いに譲らず、無言でにらみ合う。どうすればいいか解らなく傍観者となった崎守に、つばさが小声で笑いかけた。


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