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淫魔戦記 未緒&直人
【ファンタジー 官能小説】

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淫魔戦記 未緒&直人 3-4

激しく体を重ねた後の優しく穏やかな後戯で、未緒は深く安らかな眠りに落ちた。
直人はその体を隅々まで熱いタオルで拭いてやり、布団をかぶせて寝室を出る。
そして自分は浴室に入り、体を流し始めた。
「……覗き見とは、なかなかいい趣味をしているじゃないか」
ざっと体を流しながら、直人は背後に向けて殺気を放つ。
(主人の意向だ。我はやりたいとは思っておらん)
黒い靄が、出入口の隙間から滑り込んできた。
直人がわざわざ浴室まで来たのは、万が一にも未緒にやりとりを聞かれないようにとの配慮からだった。
(やはり、未緒は直に抱いてやりたいな)
強い水音を出しながら、直人は言う。
「実体もないくせに」
直人の言葉に、靄はくふくふと笑い声をたてる。
(近々実体を手に入れられるかも知れん。その時には貸してもらうかもな)
「貴様……!」
(おお恐い恐い)
全く恐くなさそうな口調で言うと、靄は直人の近くまで漂ってきた。
(そうそう。我が主人より、伝言がある)
「?」
直人は片眉を動かして、先を促した。
(未緒がいい具合に育ったから、近々いただきに来る……だそうだ)
「何だって!?」
(我に怒るな。これはあくまでも、主人からの伝言故にな)
「どういう……事だ?」
隠そうともしない直人の剣呑な雰囲気が、靄を揺らめかせる。
(さあな。我に教える義理はない。知りたければ、未緒を守り切る事だ)


ピチチ……チチ……
窓から差し込む朝の光と鳥の鳴き声とで、未緒は目を覚ました。
「ん……」
かすかに呻いて目を開き、布団の中で伸びをする。
途端に、離れの中を満たすいい匂いに気が付いた。
「!?」
がばっと跳ね起きると、タイミングよく部屋に直人が顔を出す。
「ああ、おはよう。今起こそうとしてたんだ」
直人は茶目っ気たっぷりにウインクした。
「夕べは僕のせいで疲れさせちゃったんだからね」
その言葉に、未緒が頬を赤く染める。
「お風呂も沸かしてあるし、君ほどうまくないけど朝ご飯の準備もしてあるよ。先にどっちがいい?」
「あ……」
未緒が口を開きかけたその時、お腹が音をたてた。
「……ご飯だね」
くすくす笑いながら、直人が言う。
「服を着たら食堂においで。待ってるよ」
そう言ってから直人が首を引っ込めると、未緒はあたふたと着替えに走った。
夕べ布団周りに二人揃って脱ぎ散らかしていた服が、未緒の分だけきちんと畳まれている。
夕べは盛り上がっていていくら畳む余裕もなかったとはいえ、それを見て未緒はますます赤くなった。
とりあえず畳んであった服を身に付け、洗面所でざっと顔を洗ってから食堂へ行く。
「ああ、来たね。今よそうからちょっと待ってて」
火にかけた鍋の中身をおたまでかき回していた直人が、傍に置いていたお椀を手に取った。
「……手伝う必要はないよ」
未緒の行動を予測して、直人が牽制の一言を放つ。
『それくらいは私がやる』と言おうとした未緒は、その一言で動きを止めた。
「いいから座ってて。いつも作ってくれるからつい甘えちゃうけど、たまには僕が作ったって罰は当たらないだろ」
そこまで言われては、さすがに何も言えない。
渋々と、未緒は席に着いた。
食卓の上にはご飯や切り身の焼き魚、薬味とたれを添えた納豆、海苔や香の物などのおかずが並んでいる。
ご飯は湯気を立て、納豆や香の物は見目好く盛り付けられ、魚の焼き色は申し分ない。
「はい」
それらに目を奪われていると、直人が目の前に味噌汁の入ったお椀を置いた。
中では豆腐とワカメの味噌汁が湯気を立てている。
「い……ただき、ます」
直人が向かいに座ると、恐縮しながら未緒は箸を手に取った。
まずは、味噌汁を一口。
「……おいしい……」
未緒は正直な感想を漏らした。
ダシの取り方も味噌の溶き方も薄過ぎず濃過ぎず、ちょうどいい味に仕上がっている。
「よかった」
未緒の様子を伺っていた直人が、目を細めた。
「口に合うみたいだね。作り慣れてないから、実はおいしくないんじゃないかと思ってた」
そう言って直人も箸を手に取り、味噌汁をすする。
「うん……やっぱり、君が作る方がおいしいや」
「えっ」
「今度作る時は、作り方を教えてよ」


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