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淫魔戦記 未緒&直人
【ファンタジー 官能小説】

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淫魔戦記 未緒&直人 2-7

屋上の扉を開けると一面の青空が出迎えるのと同時に、かすかにタバコの匂いがした。
どうやら、先客がいるらしい。
「よう」
脇から、声がかかる。
振り向くと、そこにタバコを咥えた男がいた。
「サボりか?奇遇だな」
「あなたは……!」
気まずさに、未緒はうつむいた。
「あの時は、ごめんなさい……」
男−有沢護はタバコを携帯灰皿に入れると、ひらひらと手を振った。
「気にするな。グループは潰れたが、いい思いができたんだから怒る筋合いはない」
この男は半年ほど前まで、この街随一のグループで頭を張っていた。
いろいろあって、未緒がそのグループを潰してしまったのだが。
「怒ったり復讐したいと思ってるなら、半年経つ前に逆襲してらあ」
「そう……ね」
「で、普段は真面目なあんたが、何だってサボりなんか決め込んでんだ?」
近くまで来た護が、そう聞いてきた。
「あれのおかげ」
未緒は屋上から見える正門を指差す。
「ああ、新聞部か……って、あいつらは神保直人の彼女を追い掛けてんだろ?あんたが逃げ隠れする必要は……まさか?」
護の顔から血の気が引いた。
「そのまさか。私が、直人様の彼女」
護が口笛を吹いた。
「半年経ってようやく付き合い始めたのか?長い春だなおい!」
「……どういう意味?」
何やら聞き捨てならないニュアンスを含んだ言葉に、未緒はそう問い返していた。
「どういう意味もこういう意味も……半年前のあんたらは、お互いに惹かれ合ってるのが丸分かりだったからな」
未緒は思わず吹いてしまう。
「本当に!?」
「嘘は言わねえよ」
「そ、う……」
少なくとも直人は、半年前から想いを胸に秘めていた事になる。
自分が直人に惹かれるきっかけになった、半年前のあの事件。
「……辛かったろうなあ」
未緒は思わずそう呟いていた。
好きになった女を抱きながら、心を通わせる事ができなかったなんて。
「俺も辛いぜ」
護の言葉は、何やら不穏な気配を含んでいた。
「あれから半年経って、色んな女を抱いたのに……まだあんたの事が忘れられない」
「そ、そう……」
身の危険を感じた未緒は、さっさと挨拶して帰ろうとしたのだが。
「頼む!一度だけだ!一度でいいから抱かせてくれ!」
護が未緒を抱きすくめようと迫ってきた。
「いやよ!」
伸びてきた腕の抱擁を逃れると、未緒は反対側に逃げ出す。


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