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淫魔戦記 未緒&直人
【ファンタジー 官能小説】

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淫魔戦記 未緒&直人-5

そして、件の日曜日。
離れとは反対側にある神保家の道場に、二人の姿があった。
二人とも禊ぎを済ませ、白装束姿だ。
二人から少し離れた位置にある座布団には中年の男性が一人、姿勢良く座っている。
何食わぬ顔をして直人の横に座りながら、未緒は内心首をかしげていた。
男性の顔に、どこか見覚えがある気がするのだ。
「では、中尾殿」
直人の声で、未緒は得心がいった。
最近メディアに良く出てくる、政府高官だ。
そんなVIPをあんな下座に座らせていいものなのだろうか?
未緒の疑問は尽きないが、事態は次へと進む。
「これより、降霊を行います」
直人は未緒を一瞥すると、言葉を付け加えた。
「何かあった時は、彼女の判断に従って下さい」
「はっ?」
中尾氏が間抜けな声を上げたが、直人は構わなかった。
「では、始めます」
直人は目をつぶり、口の中で呪文を唱え始めた。
「… ……」
しばらく、呪文を唱える声だけが道場の中に響いた。
−何も起こらない。
直人の額に汗が浮き、体がビクビクと痙攣する。
未緒は知らないうちに眉をしかめていた。
どこか、様子がおかしい。
「あっ……ぐあっ……う……」
直人が呻き始める。
「直人様……!?」
ただならぬ気配に、未緒は中腰になって様子を伺う。
「あっ、がっ……があああああっ!!」
不意に直人が絶叫した。
未緒は、信じがたいものを目にする。
はだけた着物の間から見える、肉付きの薄い胸。
一緒に夜を過ごす時には思わずしがみついてしまうその胸を、漆黒の獣毛が覆い始めたのだ。
「じ……神保殿!?」
中尾氏の声に、直人が目を開いた。
黒い瞳が、真っ赤に染まっている。
未緒はぞっとして立ち上がり、中尾氏の前に行った。
そして、有無を言わさぬ口調で叫ぶ。
「お逃げ下さい!ここは危険です!」
「えっ」
何を言われたのか理解できなかったらしい中尾氏に向かって、未緒はもう一度叫ぶ。
「私が時間を稼ぎます!屋敷から、誰かを呼んで来て下さい!」
この一押しが効いて、中尾氏は道場から出ていった。
「こういう事だったのね……」
苦い口調で、未緒は呟いた。
直人の変化はまだ続いている。
バキバキと音をたてて骨が伸び、口が裂けて牙が生え、全身を獣毛が覆っていく。
その変化を見つめながら、未緒はため息をついた。
どうして直人が自分の力を必要としたのか、今ようやく分かった。
獣化現象(ゾアントロピー)。
直人の身に起こっているものは、そう呼ばれている。
直人が自分に憑依させようとした高位の霊を押しのけて、低級な動物霊が憑依したのだ。
どういう術を用いたかは知らないが直人はこれを予測し、あらかじめ未緒をそばに置いて抑止力とする事にしたのだろう。
とすると、自分の持つあの力が必要になる。
「信頼……されてるのかな」
未緒はそう呟いて、普段は自ら封印している本来の姿を解き放った。

屋敷から人が駆け付けて来た時、道場には既に誰もいなかった……。

進路上の障害物全てを破壊しながら、美しき獣は行く。
そのスピードに、本来の姿となった未緒はついていくだけでも精一杯だった。
もしもこの姿に戻って飛行できるようになっていなければ、さっさとおいてきぼりにされていただろう。
「まだ、二本足で歩いてるわよね……まだ、直人が残ってる」
未緒は獣を追うスピードを上げた。
獣はとっくに未緒に気付いている。
未緒の存在をどうにかする前に、やっておかねばならない事があるのだ。
「……まずいわね」
未緒が、獣の目的に気付いた。
目的地は、街の北にある山だ。
よく整備されたハイキングコースがあるために休日ともなれば親子連れに大人気の山だが、今の未緒にはそんな呑気なものにはとても見えない。
あの山は、この街の霊的防衛力の要の一つが置いてある。
獣はそれを破壊し、溢れ出る力を吸収しようとしているのだ。
支配力を、確固たるものにするために。
そしておそらく、この街を衝動のままに破壊するために。
「そんな事……させるもんですか。直人の体は直人のものよ」
計をあれこれと練りながら、未緒は獣を追いかけた。


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