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アッチでコッチでどっちのめぐみクン
【ファンタジー 官能小説】

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アッチでコッチでどっちのめぐみクン-62

第18話 『予感』


「……どうしたのよ?」
 急に様子が変わったフローレンスの顔を、シープが怪訝そうな目をして覗き込む。

「そういえば、そんな古代術法がありませんでした? 精神と肉体を取り換えるという……」
 その言葉に、ほんの数時間前上書きしたばかりのシープの記憶も甦る。
「……あぁ、そういえばそんなのが『術士全代』に記されていたわね……でも、あれは実在しなかった術法、ということで研究者の間ではすでに結論づけられてるわよ」
「え? そうなんですか?」
 フローレンスが拍子抜けした顔でシープに聞き返す。

「えぇ。何でも、その術法について記された古文書は実際に近年発見されたそうだけど、解読して実験してみても何も起こらなかったそうよ。それで研究者の間で何度も再実験と意見交換がされた結果、フビラ王は、この術法が完成した場合の危険度を考えて、まだ研究段階であったにもかかわらず封印した、というのが定説になったのよ」
「そ、そうですか」
「そう。だから、あれが実はアーリストン王ではなく、あなたの父親、ルイピード・ガスツヘルム将軍である、な〜んてことがあるわけないわよ」
「そ、そうですよね。私の思いすごしですよね。さすがはシープ様、博識ですね」
 フローレンスは自分の中に生じた疑惑をあっさり否定されて、ほっと胸をなで下ろす。
「ふふふっ、私にとってこのくらい当然の知識よ」
 フローレンスの誉め言葉に、シープは得意そうに腕組みをしながらふんぞりかえる。

「……だとしたら、王のあの急な変化はどういうことなんでしょう?」
「さぁねぇ……目の前で将軍に命を捨てて訴えられて、将軍の意を最大限汲もうとした結果、人格まで将軍と同一化してしまった、とか……」
「……そんなこと、あるんですか?」
「さぁ? 言ってみただけだから」
 疑わしげに問いかけるフローレンスに、シープがしれっとした顔で即答する。
「……シープ様ぁ」
「いいじゃない。わかんないものは、わかんないのよ」
「……でも……王の突然の変貌がお父様のせいなら、私にだって責任が……」
「……何の責任があなたにあるのよ?」
「王様達ばかりでなく、私までお父様の意見に反対していたから、それで、お父様は思いあまって……」
 暗い表情をするフローレンスに、シープが少し呆れたような表情をして話し出す。

「まさか。将軍の意見は確かに少数派だったけど、全然支持する者が無かったってわけでもないわ。実際、ナクティフとの国境付近の警備にあたって、小競り合いを多数経験してきた兵士の間では強く支持されてたらしいわよ。あのマイルホーク将軍なんかも同意見だったそうだし。きっと会議の現場で自分の主張を通そうと思うあまり、興奮しすぎて勢いあまったのよ。なんでも会議には将軍以外には王と王子とジョーカルしかいなかったそうだから。三人とも将軍の意見には異を唱えてたらしいし」
「……そうですか……」
「だから、あなたの父親が自殺した結果、王様が変わったといっても、あなた自身には何の責任もないわよ」
「はい……」
「わかったでしょ? 父親は父親、自分は自分ってことで堂々としてればいいのよ」
「……はい……ありがとうございます」
 フローレンスがシープに向かってペコリと頭を下げる。
「……何がよ?」
「ですから、元気づけて下さって……」
「元気づけるって……私が? あなたを? そんなことするわけないじゃない。私はただ思ったことを喋ってただけよ。あなたの心配なんかしてないわ」
「……そうですよね。シープ様ですもの」
 そう言いながら、フローレンスが上目遣いでシープの顔を覗き見る。
「……またそれ?……どういう意味よ」
「ふふっ、ごめんなさい。気にしないでください」
 シープが口を尖らせたのを見ると、フローレンスはにこにこしながら謝った。


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