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アッチでコッチでどっちのめぐみクン
【ファンタジー 官能小説】

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アッチでコッチでどっちのめぐみクン-54

第16話 『帰ってきた英雄』


「……昨夜はごめんなさいね」
 フローレンスが、昨晩の王様とのいざこざを思い出し、ロキシーに謝る。
「……いえ、そんな……でも……昨日の王様はいつもと少し違う感じがしました……」
 ロキシーも昨晩の出来事を思い起こして首をかしげる。

「……そうね。やっぱり、お父様があんなことしたせいよね……」
「……それは……私にはわからないです……」
「……目の前で、長年仕えてきた将軍に命を捨てて進言されれば、誰だってその意見を無視なんかできないわ……それが例え間違った考えでも……」
「そんなこと……将軍の考えだって間違ってるとは言えないですよ。ナクティフが前回の敗戦を踏まえ、術士になれる人材をエリート教育し始めたのは事実で、それはやはり術士の育成で先をいった我が国に対抗するための措置なのは間違いないと思われますし」
「……だから、先制攻撃してその計画を潰す……それが正しい考えだと本当に思う?」
「それは……正しいとは言えないかもしれませんが、でももしナクティフに優秀な術士が次々に誕生すれば、もともとそれ以外の戦力では遥かにあちらが上なのですから、前回の仇討ちとばかりに戦争を仕掛けてくる可能性はかなり高いと思います。前回の戦争で大活躍したディグ様達も行方知れずになってましたから。でも……」
「でも?」
「フローレンス様はもう知ってますか? なんと、ディグ様とルーシー様が見つかったんですよぉ」
 それまで神妙な顔をして話していたロキシーの表情が、ぱぁっと明るくなる。

「……ええ、聞いたわ」
「私もジョーカル様に連れられて呼び戻しに行ったんですが……驚きましたよ。なんとっ、ディグ様達は、この城の中に術法で透明な洞窟を造って、その中で暮らしてたんですよぉ」
「えっ? この城の中?」
 自分が昨日聞き込んできた情報と、全く違う報告をするロキシーに向かって、フローレンスは目を点にして聞き返す。
「そうなんですよ。昨日偶然この城の地下室でジョーカル様が洞窟の入り口を発見されたらしくて、バーグ様方も連れてその洞窟の中を調査しに入っていったんですよ。そうしたらなんと、ディグ様とルーシー様がその洞窟の中に部屋を造って住んでいらっしゃったんですよぉ。しかも一部屋や二部屋どころじゃない、階段まであって洞窟の中とはとても思えない所だったんですよ。まるで普通の家の中みたいでしたぁ」
 ロキシーが興奮した口調で一気にまくしたてる。
 その一方でフローレンスは、少し冷めた表情になっていた。


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