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アッチでコッチでどっちのめぐみクン
【ファンタジー 官能小説】

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アッチでコッチでどっちのめぐみクン-26

第8話 『王子アリラリラン』


 めぐみと葵がシープに案内されて、大きな扉の向こう側へと足を進めると、その部屋の真ん中には気の遠くなるほど長いテーブルが置かれていた。
 そのテーブルには何十人分もの椅子が用意されているのだが、正面奥以外には誰も座っていなかった。
 めぐみは目を凝らして唯一椅子に座っている人物の顔を見ようとするのだが、少し遠くてよくわからない。
 すると、座っている人物の横に立っていた、この部屋にいたもう一人の人物がつかつかとめぐみたちの方へやってきた。ジョセフである。

「どうぞ、こちらへ」
 ジョセフはめぐみに奥の方に来るように促す。
 めぐみと葵は再び部屋の奥へと歩いていくジョセフの後をついていった。足を進めるごとに最奥の椅子に座る人物の輪郭がくっきりとしてくる。
 その人物は、どうしても二十代前半くらいにしか見えない、どこか威厳に欠けた男性だった。
 藍色を基調とした軍服のような衣装を着ているのだが、無理矢理着せられているかのような違和感がある。
 ジョセフはその男性から最も近い席の椅子を後ろに引くと、めぐみに座るように手を指し示す。
 続いてその横の椅子に葵を座らせると、ジョセフは男性の斜め後方へと下がっていった。

「ようこそ、アリーランドへ。私がこの国の王子、アリラリランです」
「あ、いえ、御招き頂いて光栄です。ボクは藤沢恵です」
「……あたしは滝川葵です」
「いやあ、お二人とも大変美しい。しかもメグミさんはあのディグさんとルーシーさんの御息女だそうで。大英雄の娘が絶世の美女とはまさに出来すぎの極致ですね」
「……あの、ボクは今は女の子にされてるだけで、本当は男なんですけど……」
「あ? ああ、そうですね。そういえばそんなことをジョセフが言ってました。これは失礼」
 アリラリラン王子は、にこにこと微笑んだまま小さく頭を下げた。
 廊下でシープから聞いた話では、王子は三十代後半に差し掛かっているはずなのだが、とてもそうとは思えない、どこか思慮の足りなさそうな雰囲気がある。

「あの……ディグとルーシーというのは、ボクの両親のこちらでの名前なんですか?」
 めぐみは今さっきの王子の言葉や、シープらの話からだいたい予想はつくものの、一応の確認はしておきたくてそう聞いてみる。
「ええ、そうですよ。ディグ・フレイアとルーシー・フレイア。それがメグミさんの御両親のこちらの世界での名前です。先の隣国ナクティフとの戦いにおいて多大な戦果を挙げて国中に名を轟かせた英雄で、夫婦にして二大英雄であること、さらにその美貌や人柄の良さなどで国民に絶大な人気を得ている存在です」
「そ、そうなんですか……」
 一国の王子に両親を手放しで褒められて、めぐみは少し顔を赤くする。
 めぐみの目には二人が、性別的な特徴が普通とは正反対の、他人には自分の親だと紹介しずらい存在として映っていたからである。
 その両親を褒められるのは嬉しい反面、あまりいい印象を持たれすぎると、現実の姿を知った人ががっかりしてしまうんじゃないかという不安な気持ちにもさせた。


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