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アッチでコッチでどっちのめぐみクン
【ファンタジー 官能小説】

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アッチでコッチでどっちのめぐみクン-2

「残念だけど、恵クンには恋人がいるの」
 急に声をかけられて驚いた二人が出入口の方を振り返ると、そこには二人がよく知る少女が、目をつり上げて立っていた。
 少女は二人の方へと足早に歩み寄ると、恵の前に進み出て少年の眼前に仁王立ちになる。
「知ってるでしょ? 恵クンには、滝川葵っていう恋人がちゃあんといて、それはあたしのことだってのも」
「そ、それは……知ってるよ」
「……じゃあ、もしかして知らなかったのは恵クンは男の子だってことの方?」
「そ、そんなこともわかってる!」
 少年はそう言って、男子の制服に身を包んだ恵の方をちらっと見る。
「じゃあ諦めなさいよねっ! 恵クンは男の子でノーマルな趣味なの! あんたに恵クンとつき合うチャンスなんかこれっぽっちもないわ!」
「べ、別に、つき合ってなんて言ってないだろ! そ、それに俺だって本当は普通に女の子の方が好きだ!」
「女の子の方が好きなんだったら、なんで男の子の恵クンに告白してんのよ」
「そ、それは……恵は特別なんだ!」
「あんたにとっては特別でも、恵クンにとってはあんたは特別なんかじゃないの!」
「……お、俺だって、恵に特別な目で見てもらおうなんてこと、か、考えてねえよ……ただ、俺のこの気持ちに踏ん切りをつけたかったんだ」
「そんな理由で告白なんかしないでよ! あんたはすっきりしても、繊細な恵クンが悩んじゃうでしょう!?」
「そ、それは……」
「とにかく、今の話は無かったことにしてよね。できないんだったら、あたしが二度と恵クンに近寄らせないわ!」
「……」
「わかったわね!」
「……この男女」
「うるさい! アホ哲太!」
 葵はことの成り行きをおろおろしながら見守っていた恵の手を引くと、ぶちぶちと葵の悪口を言い続ける哲太を残して屋上から立ち去った。

 ……………

「まったく……恵クンの親友だと思ってたのに……とんでもないヤツだわ!」
 学校の帰り道に立ち寄ったバーガーショップで、葵はハンバーガーを腹立ちまぎれに勢いよく頬張っていた。目の前の席では恵が座ってシェイクをすすっている。
「……でも……哲ちゃんは……やっぱり親友だよ」
「どこがよ! ……ねぇ、恵クン。あんな告白された後でもこれまでと同じように振る舞える?」
「……そ、それは……」
「……難しいでしょ。あいつは恵クンがこうやって悩むことを全く計算に入れてないのよ。そんなんでホントに親友と言えるの?」
「……」
「……まあ、恵クン優しいから今まで通りあいつと接しようとするだろうけど……もし気まずい展開になるようだったら、あたしがあいつの相手したげるわよ。任せて!」
「……う、うん」
 恵は葵の言葉を頼もしく思う反面、何かと葵に頼りきっている自分の情けなさに少し落ち込んでしまう。

「……でも、あいつの気持ちもわからなくもないけど」
 テーブルの上のハンバーガーを全てたいらげた葵が、恵の顔をじっと見つめてくる。
「え?」
「哲太のことよ、アホ哲太。あいつが恵クンのこと好きになるのも少しはわかる気がするのよ」
「な、なんで?」
「だってあたし、女の子でも恵クンより可愛い子なんて見たことないもん。子供の頃からずっと恵クンと一緒だったあのアホが恵クン選ぶのもわからなくはないかな……」
「そ、そう? ありがと……って言っていいんだよね?」
 恵は自分の顔に注がれる葵の視線に顔を赤くしてうつむいた。
「あははっ、恵クン可愛い〜」
 葵の手が伸びてきて恵の頬を撫でる。
 恵は自分の顔がますます赤くなっていくのを感じて、それをごまかすようにシェイクを再びすすり始める。
「えへへ〜っ、可愛い可愛い恵クンはあたしの物なんだもんね〜 哲太なんかにあげないよ〜だ」
「……」
 恵はただただ真っ赤な顔で、すでに空になってしまった
シェイクのボトルから延びるストローをくわえていた。


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