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アッチでコッチでどっちのめぐみクン
【ファンタジー 官能小説】

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アッチでコッチでどっちのめぐみクン-19

「……それよりサイファ、お前に聞きたいことがある」
 突然低い声になるディグに、サイファの表情が曇る。
「……わかってるよ、お前の言いたいことは……あっちの世界にいたお前達に術をかけられる奴なんて、俺ぐらいしかいないものな……」
「やはりそうか……」
「でもっ、信じてくれ! 俺が好きでしたことじゃないんだ! あれは脅されて仕方なく……」
「……ああ、わかってるさ。こんな所に閉じ込められたお前を見れば大体想像がつく……誰の命令かもな」
「……本当にすまん……たぶんお前の想像通りだよ」
「……アリラリラン王子だろ」
「ああ、そうだ。王国のあちこちで、お前を次期国王に望む声があがっていたからな……異世界に追放しただけじゃ腹の虫がおさまらなかったんだろうよ」
「まさか古代術法とはな……」
「ああ、俺も驚いた。まさか、ジョーカルの奴が古代術法を知っているとは思わなかったよ」
「……しかし、なぜ王子は俺達をアリーランドへ呼び寄せたんだ? しかも、ありがたくもお前の居場所まで教えてくれて。王子が国王の座にすでに就いた後ならともかく、アーリストン王が御健在の今の状況では次期国王についての議論が再燃しかねないだろうに……自惚れじゃなく」
「……」
「……何か知ってるの? サイファ……」
 急にうつむいて黙り込んでしまったサイファの様子の変化に、ルーシーが首をかしげて尋ねる。

「……これは俺の推測だが……」
「……なんだ?」
「王子とジョーカルはたぶん、お前達を王子の忠実な配下にするつもりだ……」
「おいおい、やめてくれよ。俺はアーリストン王にならいくらでも忠誠を誓うが、あんな馬鹿王子になど仕える気はないぜ」
「……めぐみちゃんを人質に取られててもか?」
「!? ……なんだと?」
「ジョーカルがさっきめぐみちゃんとその友達をこっちの世界に連れて来てたぞ……」
 牢の外にいる二人の顔色が変わる。
「おい、それは本当か!?」
 ディグが鉄格子にしがみつきサイファに向かって大声を張り上げる。
「ああ、俺の水晶にジョーカルに連れられためぐみちゃんたちがアリーランド城内に入っていくのが映ってた」
「お前、それを黙って見てたのか!?」
「無理言うなよ。俺はこっちの世界じゃ無力な一般人なんだ。しかも牢の中からじゃ、この水晶を使っていろんな場所を覗き見るぐらいが精一杯だよ」
「……あなた、その水晶を普段覗きに使ってるの?」
「……あきれたな……」
「……そんなこと言うなよ。俺はこんなとこに十六年も閉じ込められてるんだぞ。そんなことでもしてないと退屈で死にそうだよ」
「とにかく、お前はその水晶でめぐみたちがアリーランド城に入っていくのを見たんだな!?」
「あ、ああ」
「しかもジョーカルに連れられて……」
「そうだ」
「なら、こうしてはいられん。俺達も城に戻るぞ!」
 ディグがルーシーを促して早々に洞穴を立ち去ろうとするのを、サイファが慌てて呼び止める。
「ち、ちょっと待て! その前に俺をここから出してくれよ!」
「あ、ああ、そうだったな」
 ディグが伸ばした腕の先から球状の火炎を放って鉄格子を吹き飛ばす。サイファは体を伏せてなんとか爆発の直撃を逃れた。
「……もうちょっと、お手柔らかに頼むよ。こっちは運動不足で体がなまってるんだ……」
「とにかく急いでくれ! めぐみをあんな馬鹿王子のもとには置いておけん!」
「わかったよ……でもちょっと待ってくれ。こんなとこにもそれなりに大事な物があるんだ」
「ああ、じゃ俺達は海岸に止めてあるボートまで先に行って待ってるぞ。頼むから早く済ませてくれよ」

 サイファは急いで机の上にあるうちのいくつかの小道具をポケットの中に詰め込んでいく。その中には小さな水晶球も含まれていた。
 そして、必要な物を全て持ったことを確認すると、すでに洞穴の外へと向かった二人の後を追った。


 第5話 おわり


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