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「痛いのトンデケ」
【純愛 恋愛小説】

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「痛いのトンデケ」-1

小さい身長
華奢な肩幅
柔らかな髪をくしゃくしゃにさせて
大きな瞳から涙をこぼして
君は強がる。


「泣いてない」


その瞳から溢れるものはなに?

俺が苦笑しながら聞く。

「あたしの目からはダイヤモンドしかでない」

じゃあ、それはダイヤモンドなんだ?

「そうよ、拾うなら今のうちよ」




彼女と初めて会ったとき、俺は昔飼っていた黒猫を思い出した。

大学のキャンパスで、女の子は自分の友達と群れてキャイキャイ言ってるものだろう。

そう思っていたから、昼休みのわずかな時間、日差しが当たる中庭のベンチで誰の目も気にする事なく眠っていた彼女が印象的だった。

この頃、俺は院を卒業し、ここの大学の助手として働きだしたばかりで、自分の年に近い生徒の対応に四苦八苦していた。


なんか猫みてぇ。

それは何も気にする事なく寝ている彼女に思ったことだった。

同時に昔飼ってた黒猫を思い出す。
俺が拾ってきた黒猫は頭から足の先まで真っ黒で、母親や祖母から気味が悪いやらよく言われた。

あの黒猫は、そんなこと気にする様子もなくしなやかで、孤独で、頭がよくて、最期には母親や祖母からも死を惜しまれた。

声も名前も知らない彼女を見た瞬間、あの黒猫を思い出した。

穏やかに眠る彼女と、あの黒猫の眠る姿は孤独さと気高さが似ていた。

黒猫の名前は、タケといった。俺が竹やぶで拾ったからだ。メスなのにかわいそうな名前をつけてしまったなと今も思う。

タケはよく寝ていた。

朝も昼も夕も夜も。

俺に愛想をふりまくことは一切無かったが、祖父の膝の上ではゴロゴロと喉をならしていた。
小学生だった俺はむちゃくちゃそれが羨ましかった。


ある時、大学の購買で彼女を見た。友達と仲良さそうに喋っていて、なんだか俺は安心した。
そして少し悲しかった。


秋、俺は3回生の卒論のバイザーを頼まれた。
俺のゼミのメンバーの一人に彼女はいた。

「藤谷リカです」

その時、彼女の声を初めて聞いた。
他の学生5人も自己紹介したあと、俺も名乗る。

「担当教員の阿川です」

とりあえず、今日は自己紹介と卒論で何をしたいのか個人のテーマだけ受け取り解散した。


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