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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈波動篇〉-5

まず自分の心配をしてくれた仲間の心に貴未は今まで奮い立たせてきた気持ちが弱音を吐いてしまった。

信頼できる。

サルスは嬉しさと安心から自然と笑みがこぼれた。

「なんですぐに気付くかな。バレない自信はあったのに。」

「アホ。分かるわ、どっからどない見てもサルスやないの。」

素早い紅奈のツッコミに貴未と聖は思わず吹き出してしまった。あの時、現場にいた紅奈。サルスは何故だか緊張してしまう。

「サルス。それがサルスの本当の姿なのか?」

貴未の質問に笑みはとれ、真顔になってしまった。近くにあった鏡に自分の姿を映し、確認してからサルスは苦笑いをしながら、そうみたいだな。と答えた。

実際に封印を解いて、改めて自分の姿を確認したら信じられないくらいカルサそのもの。今の自分に一番驚いていたのはサルスだった。

「なぁ、一体何が起こったんだ?オレが出ていって紅奈が来るまでに何があったんだよ。」

誰もが真実を知りたかった。あの空白の時間に起きた嵐のような出来事。複数の人物の関係、そしてカルサとリュナの安否が何よりも気掛かりだった。

三人を代表した貴未の言葉に、サルスは表情を曇らせる。きっと色々と思うところがあるのだろう、サルスの沈黙は長く続いた。しかし、誰一人として急かす事もなく待ち続けた。

「カルサは封印された。」

サルスが一番最初に発したのはその言葉だった。だいたいは分かっていた事だが、実際に告げられると思わず三人の表情も曇ってしまう。動揺が隠せなかった。

「剣で…こう胸を突き刺され、その剣を媒体ににして封印されたらしい。リュナも水晶玉の中に封印されてしまった。」

サルスはゆっくりと丁寧に事のあらましを話し始めた。侵入者の強さ、流れ、次々に現れる見知らぬ人物、何故カルサは侵入者の名前を知っていたのか。

今までとは違う襲撃に動揺は隠せなかった。そして、意を決したサルスは一呼吸おいて告げた。

「行こう、カルサのもとに案内する。」

思わぬサルスの発言に三人とも驚きを隠せない。確かにカルサはあの時消えてしまい、サルスが居場所など知るよしもないと思っていた。

「サルス、お前カルサがどこにおるか知っとんのか?封印されたて…。」

どう頭の中を張り巡らせても解決への糸口は見いだせない。自分の中にある疑問をそのまま聖はサルスにぶつけた。

当然の反応にサルスは落ち着いて対応する。話は長い、まずは見てもらわないと説明はできない。そう答えて、三人を連れサルスは城の中を移動し始めた。

地下に、地下に、どんどんさがってゆく。地下牢の並ぶ部屋に隠された扉を開け、踏み入れたそこは更に地下に続く階段だった。しばらく進むと道は開け、今いる場所が塔になっていることを知る。

壁に沿って作られた階段は中央の吹き抜けを囲うように更に地下へと繋がるら旋階段になっていた。

長い吹き抜けはどこまでもどこまでも続くかのように思えた。しかし、サルスは途中で立ち止まり後ろを振りかえる。


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