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『 インタビュー 』
【SF その他小説】

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『 インタビュー 』-2

    ※ ※ ※
 
 
 寝所の真ん中で、数人の小姓に囲まれながら傷の手当てを受けていた信長が、キョトンとした顔で私たちを見た。
 
「信長公、明智光秀に謀反を企てられた今のお気持ちはいかがでしょうか?」
 
 私は録音機材をグッと信長の顔につきつけた。手がかすかに震えている。
 
 何者だぁ、貴様らは、と気色ばむ小姓を手で制して、信長が困った顔で耳のあたりを触ると、誰もいない欄間のあたりに話しかけた。
 
「あぁ、光秀。俺、信長。ちょっと攻め入るの遅らせてよ。うん。今変なのが紛れ込んじゃって。そうそう。身なりからして、2190年あたりに流行った生録の連中だと思うけど。うん。すぐ済むから。うん。斉藤利三にも伝えといて」
 
 信長は通話をおえると、うってかわって仰々しい声で言った。
 
「何!余にいんたびゅーとな。今となりては語ることあらざり、今生の縁もこれまで。微塵となりて空へ帰ろうでや。こんなとこでいい?」
 
 信長は汚いものでも払うように手を振ると、またせっせと着替えはじめた。
 私はわけがわからず、信長に食ってかかった。
 
「お前、影武者だな!本物の信長はどこにいる!」
 
 信長は鬱陶しそうに顔をゆがめると、手を止めずに言った。
 
「そんなこと俺が知るかよ!本物、偽者ってことで言えば俺が本物じゃないの。15の頃からこの役やってるから」
 
 門前の方角から、一際高い喚声があがった。町屋に泊まっていた、湯浅甚介、小倉松寿の兵が駆け付け、戦闘が再開されたようだ。
 
「俺は会社の指示でこの役をやり、会社は国から仕事を受け、国は……、って考えたところで腹の足しにもならんだろうが」
 
 どこからか、バチバチいう木のはぜる音や、襖や畳の燃えるきな臭いにおいが漂ってくる。
 火が放たれたに違いない。 
 信長は、通信が入ったのか耳のインカムのスイッチをいれ、また欄間に向かって喋りだした。
 
「あぁ、光秀?うん、大丈夫。あと10分したら硝煙蔵を爆発させるから、被害の出ない場所まで非難しといて」
 
 信長は町人の姿に着替え終わると懐から時計を出して、残り時間を確認した。
 欄間の隙間からかすかに煙が漂ってくる。
 
「だいたい、この本能寺の変だけじゃないんだぜ。うちの会社は2280年創立の中堅映画会社だが、大化の改新の中大兄皇子や中臣鎌足、奥州藤原の乱で源義経や弁慶も演ってるし……」
 
 私は膝が震えだし、その場にへたりこみそうになった。
 スタッフもどうしていいかわからず、怯えた様子で寄り添い不安そうにあたりを見渡している。


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