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真夜中のピストル、そしてキス
【同性愛♂ 官能小説】

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真夜中のピストル、そしてキス-2

2  俺は課題の資料に借りた本を返還しに、図書室へと足を向けた。
 図書室には誰もいない。
いいや、勝手に返しとけ。
 適当に本を突っ込んだ時、棚の向こうからガチャッと戸の開く音がした。

 図書委員か誰かか?
偉いな。俺だったらこんな場所、死んでも敬遠するけど。
 突っ込んだ筈の本を引き抜いて、直接渡そうと足音がする方向に向かった。
 けれど、その『図書委員』の姿を見て足は、はたと止まった。
「忍!」
「克、也…」
「はは、仲間がいた。俺も課題の本返しに来たんだ」
 克也の手には『ベートーヴェンの一生』という本が収まっていた。 課題は音楽家について調べろとの事だった。
 俺は『モーツァルトの一生』を手に持っていた。
どうやらシリーズ物らしい。
 俺としてはハカセタロウを調べたかったけど、生憎と本が無かった。
「そっちは何が分かった?」
「モーツァルトはスカトロ好きだった、て事かな」
 マジかよ、と克也は笑った。
「そっちは?」
「俺?うーん。ベートーベンは不細工だったらしいな」
 そうやって笑う克也の態度はやっぱり普通で、その事がすごくムカついた。
からかわれたんだ。

「…じゃ、俺帰るわ」
「え?待てよ忍」
「放せ…ッ!!」

 掴まれた手を力任せに振り解いた。
 驚くかと思った克也は、驚くどころか薄く微笑いあげた。
 心臓が押し潰されそうだった。
 どうして自分がこんなに思い悩まなきゃならないんだろう。
「昨日の事、怒ってんだ?」
 浅く皮膚に笑顔を張り付けながら、克也は俺に視線を向ける。
「そりゃ…!」
そうだろう。

 でも俺、本当にあのキスで怒ってたのかな。
 あんな事しといて、普通に接してくる克也が腹立たしかった。
それって、キスに怒ってたのかな。

「どうした?黙り込んで」
 克也の言葉にハッと我に返る。
そうだ。
今はそんなこと考えてる場合じゃない。
「克也おまえ…一体どういうつもりなんだ?」
確かめなきゃ、駄目なんだ。
逃げても終わらない。
「どういうつもりって?…別に?こういうつもりだけど」
 図書室の机に腰を下ろし、素知らぬ顔で笑う克也は普段とは別人に思えた。
「茶化すなよ…!真面目に答えろ。なんであんな事したんだよ?」
「なんでだと思う?」
 質問で質問を返された。
「…ッ分かるわけ無いだろ!分かんないよ、何がなんだ分かんない…ッ」

 ひょいと克也が机から降りて、俺の方に向き直り言った。


『もう少し、考えててよ』


 そしてキスを残し去っていった。

 その日も眠ることができる筈はなく。
 最早、暴力的になりつつある朝日を只々恨むしかなかった。

 翌日の学校で、授業に出る気が失せた俺は、保険室で仮病(サボり)を決行した。
(もう少し考えてて…か)
 克也の意図する所がさっぱり分からない。
 何をどう考えろっていうんだ。
考えたって答えなんか出るか。
捕らえる物が何も無いんだから。
キスの理由なんか。

―コンコン

 うっすらと意識が薄れてきた時に、ドアノックの音が静かな部屋に響き渡った。

カチャ…

 このパターンで行くと、来る奴は概ね予想がつく。 来るならさっさと来い。


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