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霞台東高校、恋愛研究部。
【学園物 恋愛小説】

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霞台東高校、恋愛研究部。No.0-3

「な、なんだ誰か来たのかっ!」
綺麗だが力強い声が聞こえる。
ミュージカルのヒロインのような声とでも言うのだろうか。
女子にしてはやや強いその口調とその声がやたらとマッチしていて、
ボクの脳への刺激は一層強くなった。
「あわわわっ、ど、どーもすいません、出直しますっ」
慌ててドアをピシャリとしめた藍原。
「…ちょっと、なんでノックしないのよっ!」
それはボクの台詞だ。
「そんなこと言われても先に入ったの藍原さんだし…」
「……まぁそう言われてみればそうかもね…。
 あぁーどうしよう…。棗先輩に嫌われちゃったかも…。」
棗先輩…?
薄れかけてた先ほどの光景が強くフィードバックする。
学生服をめくり上げた中に見えた真っ白の下着に、短めのスカート姿。
そしてあの、頭の中に直接響いて来るような力強い声。
棗先輩…ということは…。
「…さっきのが恋愛研究部の部長さんなの?」
「そう、立花棗先輩。…鳳君、見ちゃったよね?」
「…見るつもりはなかったんだよ、本当に。」
変に言い訳しても仕方の無い状況だったので、正直に話した。
「別にだからどうってことはないわよ?さっきのはたぶん私のせいだし…。」
たぶん、ではなく間違いなく藍原のせいだがそこはあえて黙っておくことにする。
そのまま無言の時間が数十秒ほど続いた後、国語準備室の中から声が聞こえた。
「…いいぞ、もう」
藍原が申し訳なさそうに弱々しくドアを開く。
準備室の奥の方に、コホンと軽い咳払いをしながら立つ一人の女性。
後ろの窓から差す夕日に浮かぶその人の姿はただ美しかった。
もはや『女子』などといった言葉はその人にはふさわしくない。
「……藍原、その後ろの男の子もさっきいたのか?」
ボクの方を小さくも大きくもないが妙に澄んだ瞳で一瞥し、
あの力強い声で藍原にそう問いかける窓際のヴィーナス。
「…あ、まぁ……なんというか、少しだけ見ちゃったかなーみたいな…」
「……そうか。…で、何の用だ?入部か?」
怒鳴られるか叩かれるか、それでなければ何か物を投げられるのではないか、
と身構えていたボクはとりあえずほっと胸を撫で下ろした。
…ちょっとだけあの綺麗な声で怒られてみたかった気もするが……。
「あ、入部です。私と鳳君の2人。」
……なんだって?
何を言ってるんだこの女は。
人をあんなアクシデントに巻き込んでおいて挙げ句の果てにこれかっ?
「ちょっ、待ってよ、藍原さん。今日は見学しに来ただけだって」
慌てて訂正するが、もう遅かった。
「何?そっちの男の子も入ってくれるのかっ?」
完全に勘違いされてしまっている。
ツカツカとボクの方に歩いてくる立花先輩。
整った顔がずい、とボクの顔に近づく。
藍原から作り物のにおいではない、女の人独特の香りが鼻を掠めた。
…うわぁ、近い……。
「ありがとう、少年よ。名はなんと言うのだ?」
まつげ長いんだな。
「あ…、鳳剛です、…オオトリツヨシ」
心臓が聞こえそうなくらい強く速く鼓動を刻んでいる。
「そうか、心から感謝する。
 もうご存知だと思うが、我が恋愛研究部は今、存続の危機を迎えているのだ。
 いやぁ、本当に良かった。ありがとう、鳳君」
そう言ってボクの手を握りぶんぶん上下に振る立花先輩は、
さっきまでのクールさは完全に消え、なんだか幼い子供みたいで思わず顔がにやけてしまう。
…この人のこともっと知れるなら、ちょっと入ってみてもいいかもしれない。
そんな風に思えてしまうほど先輩は綺麗だったし、可愛らしかった。


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