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Story
【推理 推理小説】

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2nd_Story〜月灯りと2本の繋がる手〜-5

4.消えさりて

絵里が腹を刺される事件があった翌日の事。里紅と黄依は当然のように喫茶店『MILD』に足を運んでいた。
「で?犯人は誰?」
黄依がテーブルを挟んで向かいに座っている里紅に聞いた。
「いきなり?…ってか少しは自分で考えろって」
苦笑いをする里紅。
「そんな事言ったって何も分かんない「ったく、仕様がねぇなぁ。ヒント、出してやろうか?」
ブーブーと文句を垂れる黄依とは対象に、物凄い明るい笑顔で里紅が言った。その反応の早さはまるでマタタビを見つけた猫のようだった。
「ヒントぉ?」
怪訝な目で聞き返す黄依。
「そ、ヒント。それじゃあ第1ヒントは、…絵里ちゃんが、自分の症状を知らなかった理由」
「へぇ〜、で、第2ヒントは?」
「だから少しは考えろって…」
「ま、良いじゃん良いじゃん」
カチャン
黄依がへらへらした態度で答えた所にマスターが飲み物を運んできた。里紅と黄依は会話を中断する。
「ありがとうございます、マスター」
里紅がホットコーヒーを受け取った。
「その言い方は止めて下さいって言いましたよね?」
「すいません。…碧さん」
「そうそう、それで良いんです」
神木 碧<かみき みどり・女>はうんうんと頷き黄依に声をかける。
「お久しぶりですね、黄依さん」
「はい」
屈託の無い笑顔を返す。黄依がその笑顔を見せるのは碧を含め3人しかいない。
碧は大学卒業後すぐにこの店を開いた。現在23才、店員と彼氏募集中。
カラァァン
「そう言えば…あ、いらっしゃいませ!…ごめんなさいね。また今度お話ししましょう」
碧は入って来た客をカウンター席に座らせて、カウンターの中へと入っていった。
「で?第2ヒントは?」
碧と客に聞こえないように小さい声で(他人に気を使うこと事態珍しいが)黄依が聞いた。
「…絵里ちゃんが握っていた髪の毛」
里紅も小さな声で返す。黄依は目を天井に向けて悩み出した。
「でもさあ…」
「ん?」
目を天井から里紅に向ける。
「絵里ちゃんに聞けば全部分かるんだけどね」
「…それを言ったら駄目じゃん」
そっけなくそう言うと黄依は再び悩み出した。
「…まあ、そりゃね…」
軽いイジケモードに入る里紅。奇妙な笑いを顔に浮かべ、砂糖とミルクをどっさり入れたコーヒーをスプーンでかき混ぜている。
「あ、つまり自殺ってこと?」
「え?何が?」
黄依の一言でイジケモードから生還した里紅。
「だから、犯人でしょ?」
里紅を真っ直ぐに見る。
「あぁ、そうそう、絵里ちゃんが自分でやったんだと思う。でもそれだと…」
「ヒントがヒントになってない」
里紅の言葉を引き継いで黄依が言った。里紅は満足そうに頷いている。
「………二重人格…」
黄依がポツリと呟いた。
「え?…あぁ、よく分かったな」
あんなヒントで、と黄依を誉めているのかいじめているのか分からない事を思う(言葉にするには危険すぎる)里紅であった。
「別に。普通」
無愛想に黄依が答えた。
「んー、まぁでも、間違ってるかもしんないしね」
「うん」
「うんって…」
ちょっと…酷くない?…でも、まぁ「うん」はまだ良いほうかな、と里紅は一人妙に納得した。


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