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ラブレター
【純愛 恋愛小説】

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ラブレター-1

お元気ですか?
そう書き始めるのは、少しおかしいですね。 もともと筆無精で手紙なんて書き慣れていないから、人一倍、書き始めには悩みます。だけど、この手紙くらい悩んだことはありません。手紙の種類のせいか、あるいは、その相手が君だからなのか。とにかく、こうやって文字が文章となるまで、本当に苦労しました。書いては消して、消しては書いて、という具合にね。
今、僕は自分の部屋にいます。とは言っても、実家の部屋ではありません。
君には伝えていなかったけれど、去年の冬からアパートで暮らすようになったんです。僕もいいかげん二十歳だし、フリーターで実家にいるのも肩身が狭く、親と顔を合わせるのさえ苦痛となったから、せめて生活だけでも自立させようと家を出ました。
月四万。部屋はフローリングにロフトがついていて天井が高いです。トイレとバスが一緒なのは難だけれど、家賃は安いでしょう。いい物件だ、と僕的には納得しているよ。
自立、と一口に言っても本当に楽じゃないと感じる今日このごろです。そんなこと言ったら、君に「当たり前でしょう」なんて笑われるかもしれないですね。うん。僕が甘かった。生活するって、大変だ。
フローリングにはほとんどものを置いていません。テレビとソファとコンポくらいだね。他はロフトにあげてしまっているから。
とても部屋を広く使っています。
時々、同じバイト先の友達なんかが遊びにくると殺風景だと馬鹿にするけれど、僕はとても今の部屋を気に入っていたりします。
大きな窓から差し込む朝日も、上の住人の深夜の洗濯音も、うるさい集金も、なんとなく愛せる毎日です。
バイトはね、朝から晩までびっちりです。
ふらふらになって帰ってきて風呂に入ったり入らなかったり、それでも、必ず一度はコンポの電源を入れて音楽を聴きます。
その日の気分で、ロックであったりポップスであったり、時にはラジオであったり。それでね、時々、耳に入ってくるのが僕の好きな曲だと、僕は君を思い出します。
僕の好きな曲。
つまりそれは、あの日、君に送ったMDの中身と同じだから。
MDの容量が許す限り、僕は自分の好きな音楽を詰め込みました。持っていたCDをかたっぱしから引っ張り出して、中にはわざわざ借りてきてまで録音したものもあります。全ては、君のため、というより実を言うと自分のためにとった行動だったと今になって思います。気が付いていた?
君にあげたあの曲たち。どれも恋の歌なんです。しかも片思いの、ラヴソング。
女々しいと思われるかも知れませんが、僕にはそういう形でしか、君に想いを伝える方法が見つからなかった。もしも伝わらなかったとしても、せめて君が向こうへ着くまでの退屈しのぎになれば、それだけでも全然かまわなかった。あの日が、僕と君が会話を交わした最後になるなんて、ちっとも考えていなかったよ。どんなに文字に綴っても、もう二度と君に届かないのなら、未来を怖がらず、お互いの関係が壊れてしまうことも恐れずに伝えればよかったと、いまさらながら後悔してしまいます。遠い遠い君へ、僕は君が好きでした。
ずっとずっと、これからもきっと。
さよなら。どうかいつか、空よりも遠い世界にいってしまった君に、会えますように。


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