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ユートピア男
【コメディ その他小説】

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ユートピア男-1

あ〜、ちょっと寒いな。なんて。
思ったのは確かに今日の朝だと思う。
通学にセーター着ていくかどうか迷って危うく遅刻するところだったなぁ、と思ってた。
優柔不断だなぁ、ってゆっくり他人行儀に考えてそう思う。
ごめんね、読者の皆様。思う思うと小学生の作文のように。
まぁ、それは少しの間、置いといて学校についてからのこと。
普通に授業もこなして、途中お昼ご飯をパンにするかおにぎりにするか迷って昼休みが終わるかと思ったけど、結局、どうにか、平凡に学校は今日の一日を終えようとしていたわけで。
でも学校の終わりはストップをかけられて珍しく僕は放課後の学校にいる。

これは優柔不断な僕と、美少女だけど可愛くないピアニストと、それからクロールを泳いでたクロール男の三人で構成された哲学的な話。
ごめんね、うそ。哲学的な話なんて無理だよ、僕には。

それはそうとさっき少しの間置いといた話だけど、僕は思うっていう微妙な、確定ではない真ん中な感じが好きだから多用するんだと思う。

「ごめんなさーい、それ取って下さーい」
帰ろうと校舎を飛び出した矢先、僕は上から呼び止められた。
見上げるとひらひらと舞うように落ちてくる二枚の紙。
「え?え?え?ど、どっち取ればいいの?あー、やばい落ちてきた!?」
突然の出来事にどもる僕は何もせず棒立ちになってしまう。
「キャー!?危ない、避けてっ!!」
さらにさっきの声が何かを叫ぶからあわてれば、視界一面に広がるトランペット。
「うそ…マジっ!?」
マジのジのあたりでトランペットが顔に当たり星が視界に舞う。
あー、ちょっとやばい。
なんて思ったときにはもう遅く、コンクリートの地面にゴッツンぴよぴよ。
それから意識が手を振って僕を置いてきぼりに。

まってよ意識さん、あははは。
うふふ、捕まえてみて、優柔不断さん。
優柔不断な僕と僕の意識のジャレ合い追いかけごっこ。
あははは、捕まえたよー
でもそこは砂浜ではなく川沿いの砂利道。
周りでは子供が石積んでたり。
あー、これってあれかな。
「………そう三途の川ってやつ」
捕まえた意識さんがいっきに僕を現実の世界に連れてきて早々目にはいるのは机の脚。
横たえられてる?
もしかして。床に。
「あのー…もしもーし。大丈夫ですかー?三途の川は渡っちゃ行けませんよー」
何か棒のようなものでチョンチョンと控えめにつつかれ、それから例の声。
「大丈夫ですよ、渡りませんから。トランペットさん、安心してください」
答えてから、上半身をゆっくりと起こす。
するとドラムとかを叩く棒を持った女の子が一人、僕の方を見ていた。
多分僕、その棒でつつかれたんだろうなぁ、とか思って密かにしみじみしてみる。
「あの、大丈夫ですか?トランペット当たったみたいですけど」
不意によみがえる視界いっぱいの金色。
う、鼻が…。それから後頭部も。というわけでもないか。
「まぁ、今のところはどうにか。ところでトランペットさん、ここはどこですか?」
見渡せば一目瞭然音楽室。
だけど僕の学校には音楽室が三つくらいある。


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