『ほんとさ。』-1
「ただ満たされたいだけなのに。」
「ずいぶんとわがままなお姫様だこと」
彼は言って、あたしの前にティーカップを置いた。
波打つ茶色の液体からは、甘い香り。
「ビールがいい」
「昼間から何言ってるの」
彼は困ったように笑い、カップに口付ける。
あたしも、渋々口へ運ぶ。
無駄なまでに甘いそれは、ずいぶんとあたしを暖めてくれるようだった。
「今日はどうしたの?」
「…寂しくなったから来てみただけ。」
ポツリと言うと、彼は面白くなさそうな瞳を蛍光灯へ向けていた。
「ねぇ?」
「ん?」
「機嫌わるい?」
そこでやっと視線をあたしに戻した彼は、ゆるく重い息をはきだした。
「俺だったら愛してあげられる。」
それはほんとう?