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しにがみハート
【コメディ 恋愛小説】

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しにがみハート#5.5-3

「お化け役の人の演技力ってすごいですよね」
「暢気なこと言ってんじゃねー!!」

そう言いながら廊下の突き当たりまで来た。
前には『出口』と書いてあるドアがあった。ちょっとおかしい。まだ追い掛けられただけだし…。
とりあえず開けないと。

「絢芽、開けるぞ?」
「どうぞ♪」

後ろには鎧武者が猛ダッシュしている。
…マジですごい形相で。

「開けるぞー!」

ガチャ…

『ウワアアァァ!!!』
開けたと同時に血みどろのお化けが突っ込んで来た。

「うぉ!!?ビビった…大丈夫か?絢芽」
「血…血ぃ…」

バタッ…

思いっきり気絶した絢芽。

「…絢芽?」
『…お客様?お客様ー…』

顔を見合わせる俺と血みどろお化け。

『とりあえず…ベンチにでも運びましょうか』
「そうですね…。なんかスイマセン」
『いえ、私が怖いばっかりに…』
「いや、それがお化けですし…」
「……」
『……』

〜〜〜

「血が…ぁぁ」

ベンチに座り、俺のひざ枕で絢芽が横になっている。寝言からすると絢芽は血が苦手っぽいな…。

「んー、これからどうするか…」

絢芽の髪を撫でながら考える。
どうするっていっても…とりあえず絢芽が起きないといけないし…。

「あぁ!!孝紀さんまで血みどろに…う…うぅ…」
「俺かよ…」

いつも強気な絢芽がうなされてんのも…可愛い。絢芽には申し訳無いが、自然と顔がニヤける。

「もうちょっと起こさないでおきますか」
「あぁ…みんな血みどろ…ぁぁ」


〜〜〜


数十分後。

「そろそろ起きてくれよー…」

あたりは薄暗くなり、それでいて少し寒くなってきた。絢芽には俺のジャンパーを掛けてあるから大丈夫だけど…俺が風邪ひいちまう。

「う…うん?孝紀さん…」
「おー…おはよう♪」
「こんばんはですよ…」
「分かってるっつーの!!」
「あ…後ろ、パレードやってます」
「お?本当だ」

二人で後ろを見ると、ちょうどパレードがやっていた。賑やかな音とともに、色鮮やかな光。
それは、とてもとても綺麗だった。

絢芽はまだ起きたばかりなせいか、元気が無い。もうちょっと元気になるまでは、このベンチで二人で見ていよう。


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