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底無しトンネル物語
【推理 推理小説】

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底無しトンネル物語-4

その時!

急にドンッと僕の後頭部に衝撃が走った!
「グッ!」
 痛みが頭の一カ所に集まり、その場に倒れて苦しみ悶えた!
 何者かに鈍器で殴られたようだ!苦しみに耐えているとソイツは僕から力ずくでカメラを盗ろうとした!
 僕はソイツと必死に抵抗して争う!
 とっさにカメラのフラッシュのボタンを押して闇雲に何枚も写真を撮り続けた!
 ソイツは顔を見られない自信があるのか、なおも僕からカメラを奪い取ろうとする!

 そして「誰だ!そこで何をしている!」トンネル内に男の声が響いた。歩いて来た方向から無数の光が近づいてくる。

 一瞬、僕は隙をみてカメラの蓋を外してフィルムを暗闇へと放った。
 ソイツは焦ったのか僕の背中を蹴り上げてカメラを奪い去った。逃げいくソイツ背中を見つめながら僕は悔しさにこぶしを強く握った。
 ようやく懐中電灯を持った警官が間近に着いた時には、僕はフィルムの投げた方向を指差して気絶してしまっていた。


 気がついた時には僕はベッドに寝ていた。頭には痛みが残ってる。ゆっくりと体を起こす。ここは病院のようだ。
「やあ、気がついたか」
振り向くと刑事風の身なりをした二人の男が立っていた。

「私は港湾警察署の磯山と言うものだが。まあ率直に聞こう、トンネル内で何があった?」
まるで自分が犯人になって自供を媚びられているようだ。
 僕は慎重に言葉を選んで言った。
「トンネル内を歩いていたら急に後ろから殴られて、格闘の末にソイツにカメラを奪われました……」

「ふむ、じゃあ犯人の顔は見ていないんだな?」
 はいと答える。それにしてもこの町はどうなってしまったんだろう。銀行強盗に泥棒にひったくりか……。
「あのう、さっきの奴は昨日の強盗事件と関係あるんでしょうか?」
 僕は後頭部の痛みを気にしながら聞いた。
「いや、我々が追っているのは銀行強盗とはまた別の容疑者なんだが……」
 磯山警部!そう言って病室に部下らしき男が封筒を持ってやってきた。
「少年が投げたフィルムの現像が完成しました!」
 おお、そうか!と言って磯山警部は写真を一枚一枚チェックする。
「ダメだな。残念ながら犯人に繋がる写真はなさそうだ……」
 それにしても犯人は何故、カメラを欲しがったのだろうか?財布ならまだしも……よっぽどのカメラマニアとでも言うのか?
「警部さん!その写真、ちょっと僕にも見せて!」
僕がそう言うと、やれやれと言った表情で磯山警部が写真を渡す。

 なるほど、確かにどれもブレていたりトンネルの壁や学校の制服が撮れているだけでソイツの顔は愚か体さえ……!

僕は一枚の写真を手に取った!
ソイツとカメラを取り合った際に偶然撮れた一枚の中に犯人の手と腕が撮れていた!
 そして、そこには見慣れた銀の腕時計が写っていた!

「まさか……!」
僕は驚きのあまりそれ以上は声が出なかった。
しかし、何故……?いや!今はそんな事を考えている暇はない!ミサトが危ない!

僕は頭に巻かれた包帯をギュッとキツく締めて、靴を履き病室を出ようとしたが、磯山警部に行く手を阻まれた。
「おい!どこへ行くんだ?」

「犯人がわかったんだ!ついてきて!」僕は力の限り走って、病院から駆け出した!後から磯山警部が続く!

 静かで茫洋な海を満月が照らしている。しかし、すぐに不気味な黒い雲が月を覆ってしまい、海は輝きを失い、風が吹き大地の草木が揺れる。
今夜は嵐になりそうだな、と思いつつも犯人の元へと走る。


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