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底無しトンネル物語
【推理 推理小説】

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底無しトンネル物語-3

 放課後。ホームルームが終わってミサトに帰ろうと声を掛けようとしたが、いつもいる席にいなかった。
「あれれ?ミサトはどこ行った?」
 僕は近くの席のタケルに聞いてみた。
「ああ、ミサトは熱があるからって早退したぜ。昼前にな」
!僕は愕然とした。
「おい!じゃあミサトは一人で帰ったのか?」
タケルの肩をつかんで問いただした。
「いやいや!担任の山下に付き添われて帰ってったよ。アイツの家昨日泥棒が入ったらしいからなあ。ショックだったんじゃないか?」
 そうかそうか、キツく聞いて悪かったなと言ってタケルの肩を軽く叩いて詫びた。
 ミサトに頼られなった自分もショックだったが、今一番落ち込んでいるのはミサトなのでこの事は不問に期そう。

「なあ、これから俺たち新聞係りの山側の班と一緒に写真撮りに行かないか?あの子と二人だけじゃどうも気まずくてさあ」
タケルが偏屈な口調でそう言った。
 タケルが言ったあの子とはミサトの友達だろう。
「そうさせてもらうよ」
 僕はやる気のない声で同意した。


 ミサトを除く僕達三人の新聞係りは学校を後にして天狗山に向かった。
 天狗山は僕らの学校の真向かいに存在する標高の低い小さな山である。山の頂上に天狗の鼻のような整った岩があり、大昔に人々がこのあたりの天災を取り除く祈りを込めて建てたれたらしい。
 山の正式名称は違うようだが、地元の人には天狗山という呼称で通っている。
 そして、天狗山に登りきったところでミサトの友達がカメラを自宅に忘れてきたことに気づいた。
「おいおい、ボール無しでサッカーするようなもんだぞ」
とタケルが突っ込んだが無視された。
 僕達は天狗山の岩や石灯籠を撮って、最後に三人で岩をバックに記念撮影をすることになった。一体何の記念なんだ?と思ったが、ミサトが入ってなかったことにはヒドくがっかりした。そうだ帰りに見舞いに行ってやろう。
 タケルのカメラを使ってタイマーをセットしたが、その時に妙な気分がした。しかし、原因はわからないまま撮影した。

 そこで今日はお開きになった。
 空の夕陽が雲を赤く染めて、肌寒い風が頬をなでる。

 帰り道。底無しトンネルの付近にはまだ警官が残っていて、活況なドーベルマンが紐に結ばれて唸っている。早く獲物を仕留めたがっているハンターのような目だ。
 「まだ犯人は捕まってないんだな……」そう呟いて早歩きでその場を後にした。首にかけているカメラが振り子のように揺れる。

 底無しトンネルに入って視界が一気に暗くなった。暗順応で目が慣れるまで視界は限りない闇なのだ。天井の明かりなど全く役にたたない。
 中でもS字で道が曲がった辺りは不気味な暗闇が全て覆っていて何も見えない。僕は光を模索するように、壁づたいを頼りに気をつけてに前へと進んでいく。


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