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わたしと幽霊
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わたしと幽霊 -心--1

あたしは柚木 朱美16歳。
ごく普通の女子高生。
平凡な毎日を過ごしたいと願っていたのに、そんな想いはあっさりと音を立てて崩れ去った…

……のが、1時間前。

「おい、補習中は集中しろ」

まあ、人とは違う特技(?)を持ってたから、いつかはこんな境遇を背負うだろうと思ってはいたけど…

「だいたい、ノートの取り方がなってないな。黒板を書き写すだけなら虫でもできるぞ」

…虫は字を書けないから。
引きつるこめかみを押さえ、聞き流せ、と自分に言い聞かせる。
この声――後ろから聞こえるこの性悪な台詞は、あたしにしか聞こえていない。
だから、人目のある所では反応できない。
――反省文を提出したついでに、ナゼか軽く補習を受けさせられてるあたしの後ろに座った彼が
さっきからチクチク小言を差してくる。

彼――理不尽な理由であたしに憑り付いた元浮遊霊の彼は、高谷 圭という。
この学校の元生徒で、女教師と禁断の愛の果てに心中を遂げ――というエピソードは素敵。
でも実際はそんな悲劇の片鱗も伺えない、あたしにとってはいじめっ子。
こんな毎日が続くのかと思うと、ヘコむな…
はぁ……。
先生に気付かれないように、小さく溜息を漏らした。

そしてその後、図書室へ。
いつも亜子と一緒に帰ってたのに、今日はごまかして先に帰ってもらった。
友達に嘘をついてしまった後悔が、今更ながらのしかかってくる。

自分からやったことなんだけど…
ちょっと彼と話をするだけのつもりが、挙げ句の果てにこんな事になるなんて普通は想定しないし。
「あなたみたいな人には分からないよねー…」
つい、唇から漏れる。
「みたいな、という一節がひっかかるが」
あたしの前の席に座る彼は、眼鏡の奥の目をちらりとこちらに向けた。
あたしはブツブツ呟く。
手に持った職員名簿に再び視線を戻した。
彼は、それを前から覗き込んでいる。
「えっと…あなたの最期の年は何年前だったっけ」
何とか気を取り直し、記された年度一覧を指で撫でながら高谷さんに聞いた。
「1998年の三年生の欄だ」
へぇ…今からだと8年前で、そん時に18歳だから――
今年、26歳かぁ…
でも見た目はあたしとあまり変わらない、まだ少年の姿。
止まった時間……
なんか不思議だよね。

でも8年も…
この人は誰にも気付かれず、記憶に関わる場所を彷徨い続けてたんだ…ずっと。
そう思うと、こんな人でも何だか気の毒で、少し胸が痛んだ。
「どう?載ってる?」
紙面に並ぶ職員の名前を無言で追っていた彼の目が、ある一点でぴたりと止まった。
そして、隣のページに写っている教員の集合写真をじっと眺めている。
その視線の先には――
彼が見つめるカラーの写真の中で、一番下の段で柔らかい微笑みを浮かべて佇む若い女性教師。
薄い水色のスーツを着て、爽やかに微笑む彼女。
新任サンかな…なんかキラキラした感じ。


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