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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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続・高崎竜彦の悩み 〜降り懸かる災厄〜-7

「どうしてあたしの弁解よりも、佳奈子の笑顔の方を選ぶのよ!?」
 いや、あの……。
「昔っからそうよ!あたしの説明を信じない人が、佳奈子の笑顔は無条件に信じるの!!」
 あのなぁ……コンプレックスを転嫁するなよ。
 とはいえ、このまんま店内で喚かせておく訳にも行かないし……はぁ、仕方ない。
 俺は迷惑料代わりに多めの代金をカウンターに置くと、喚き続ける尾山さんを店の外に連れ出した。
 店の外に出てきてもなお、尾山さんは喚き続けてる。
 周囲の通行人の目がイタいなぁ。
 仕方ない……俺は尾山さんを引っ張り、裏路地へ行った。
 そしてとった行動は……。
 
 パシンッ!
 
 そう、尾山さんの片頬をひっぱたく事だ。
 特に親しくもない相手を優しく諭す程、俺は人間ができちゃいない。
 しかし……仮にも男が女に手を上げる訳だから、もちろん加減はしてある。
 それでも尾山さんにはかなりの衝撃だったようで、喚き散らす事はなくなった。
「俺には、あんたのご機嫌伺いをする義理はない。そこんとこ、理解してくれるよな?」
 なるべく優しい口調で諭したつもりだったが、尾山さんはびくりと震える。
 たぶん口調が恐いんだろうが、そんなん構っちゃいられなかった。
「分かり、ました……」
 渋々、といった様子で尾山さんは頷いた。
「結構」
 さて、これからどうするか……。
「……初めて、です」
 あれこれ考える俺の耳に、何やら意味深な一言が飛び込んできた。
「人から、叩かれたの……親にさえ、された事なかったのに」
 あぁそうか、初体験おめでとう。
「……ごめんなさい」
 顔をうつむけて、尾山さんが言った。
「高崎さんのために、よかれと思ってやったんですけど……全部、裏目に出たんですね」
 ……ナニ?
「どうしてそんな事……?」
 気付くと俺の口は、そう問い質していた。
 化粧の上からでも分かるくらいにほんのり赤く染まった頬を撫でながら、尾山さんが微笑む。
 どことなく、寂しそうに。
「好きな人に好いて貰おうと努力するのは、そんなにおかしな事です?」
 ……え?
「高崎さんが佳奈子とそういう仲だっていうのは、見れば分かります。でも、私が誰を好きになるのかは、私に決める権利はあるでしょう?」
 いや、確かにそれは地球上の誰にも決められない、自分だけの特権だが……よりにもよって、俺か?
「見た感じ、私にもまだチャンスがあるみたいですから……友情を犠牲にしても、手に入れたいと思ったんです」
 そ、そこまで……。
「でも全部、高崎さんには迷惑だったんですね……ごめんなさい」
 いやあの、急に謙虚になられても……。
「迷惑がられるだけでしたら、仕方ないですよね……高崎さんと佳奈子の間に、割り込もうとした私が悪いんですから」
 あの……。
「だから最後に、我が儘させて下さいね」
 呆然としてる俺の両頬を、何かが鷲掴んだ。
 そして……。


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