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溺愛
【SM 官能小説】

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溺愛-1

一日を締めくくる
ささやかな至福の時…。

ハーブオイルの香る温めのバスタブから上がり、汗の退かない躰にバスローブを纏うと、グラスに注いだボルドー色のワインを一気に飲み干す…。

満点の夜空に朧月夜が浮かぶ9月の終わり、
開け放った窓で「フッ…」と大きく息を吐くと、
仕舞い忘れの風鈴の音と共に、寸分の乱れ無く鳴き続ける虫の音が、
独り暮らしの一樹の部屋に優しいメロディーを奏で、ルームシェードの仄かな明かりを灯し、
ノートパソコンにフロッピーディスクを差し込むと、日課となっている日記を書き込んでいた。


「トゥルン…」
一通のメール受信を確認してクリックすると、
ようやくオープンに漕ぎ着けたアンティークショップ「桜華」のオーナー、箕山奈緒子からだった。

To:徳永一樹様>
「今晩は!本日はご多忙にも係わらず、オープンレセプションに参列戴き、誠に有難うございました。プランニング段階から幾度も私の我が儘を汲んで下さり、今日めでたくオープンしたお店に大変満足しております…。
これも徳永様のご尽力あっての事と思い、深く感謝致しております。

私同様、お独りでの生活とお聞きしておりましたが、お体に気をつけ、
益々のご活躍を心より願っております。
又、お近くにお越しの際は是非ともお顔を覗かせて下さいね! 敬具。
箕山奈緒子」


RE:箕山奈緒子様>
「メール有難う御座います。箕山様の感性にも触れ、ワクワクしながら仕事が出来た事。私個人としても、大変心地良い刺激になれた事は言うまでもありません!又顔を出しますので、楽しい趣味の話など聞かせて下さいね!今後も益々のご繁栄を祈っております…。
徳永一樹」


大正初期のアンティーク着物と、中国唐期の青磁器が店内を飾り立て、
平静な骨董通りに構えた店内の趣は、箕山奈緒子が漂わす例えようも無い色香を象徴する様に、
アロマスティックで焚かれたジャスミンの香りに満ちていた…。


徳永一樹(36歳)。
学生結婚をした妻と離婚し、独身暮らしに戻って早11年。
都内大手工務店でスペースデザインに携わり、三年前に念願だったデザイン事務所を起こし、
口コミながらセンスのある空間設計が評判を呼び、途切れがちだった仕事も、ようやく軌道に乗り始めていた…。

そんな矢先に、
クライアントでもあった箕山奈緒子に出会い、
いつしか一樹の心に仄かな恋心が芽生えていた。

箕山奈緒子(37歳)。
4歳年上の既婚男性との不倫関係に終止符を打ち、長いOL時代、趣味で始めた古着物や青磁器の収集に見聞を深め、夜はクラブホステスのサイドビジネスをしながら古物商の資格を取得し、
念願のアンティークショップを開業するに至り、知人からの紹介で、徳永一樹との運命的な出会いをしていた。


そんな出会いから1ヶ月が過ぎ、抱えていた仕事も一段落した11月。
久々の休日を迎えた一樹を青山ブックセンターへと向かわせると、その矛先を日本古美術や骨董美術史のコーナーで立ち停まらせていた。


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