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サボり魔と委員長の屋上
【青春 恋愛小説】

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サボり魔と委員長の放課後-1

「ま、ウチはいつかこうなるやろとは思ってたけどね」
彼女の声が響いて、僕の耳へと入ってくる。鼓膜を震わすのは、凛とした関西弁だ。
場所は教室。燃える太陽が全てを朱に染めている。僕の顔やシャーペンにノート、黒板から机に床……そして彼女の青筋を作った顔も。
彼女の名前は草津薫。
このクラスの委員長にしている。
ノンフレームの薄いメガネをかけ、その奥の瞳は切れ長で見るからに気が強そう。実際強いけど。
ショートカットが似合う美人さん。スタイルも平均値以下の胸を除けばハイスペックだ。胸については地雷だから、あまりふれないでおく事が賢明だ。
ついでに自己紹介。
僕は衣笠広見。
一言で言えば、サボり魔って所だろうね。長所が少なくて、短所が多い人間だとわかってくれればそれでいいや。
さて、話を戻そう。
どういう状況かと言うと、簡単に言えば僕は居残りさせられてる。 そして、彼女が指導役を仰せつかり、かれこれそろそろ一時間。
いつか僕も居残りさせられるとは思ってたけど。……まさかよりによって今日なんてね。
「先生も鬼畜だよね、よりによって今日にするなんて」
「あ、ん、た、が、悪いんやぁ、ろ!!」
彼女が僕の両こめかみに拳を当てて、グリグリしてくる。
「そ、そんな懐かしの拷問を………痛っ、痛たたたたた!!!」
本当に痛い。頭が割れるぅ!
「ウチの乙女な期待を裏切られた清らかな心はもっと痛いわ!!」
「………乙女で清らかなら、こんな残忍な事しないよね」
やっと離してもらったこめかみを抑えながら、ボソッと言う。
あ〜、痛かった。絶対クレーター出来てるよ。
「もっとして欲しいみたいやね。広見ちゃん………もしかしてマゾ?」
瞳の奥に怒りを携えながら、微笑む。
うん、なら君はサドだね。でも言わない。そこまで僕も愚かじゃない。脳細胞が結構破壊されちゃったけど。
「まさか。これ以上されたら本当にそっちに走るか、脳が耳から出るかのどっちかじゃないか。…あいにく、僕はどっちもお断りだよ」
「耳から出るか!」
パシーンッと、丸めた教科書で後頭部をはたかれた。うーん、これが本場のツッコミか。
「あーもう!!早よ終わらしぃ!!」
そう言って、彼女は再び教科書を捲りだす。
彼女がこんなに不機嫌になってる理由は端的に言って『放課後デートが流れた』から。
今日は彼女と映画を見に行こう、なんて高校生らしい淡い期待を浮かべてたわけで。それは僕だけじゃなく、彼女もだったわけで。ついでに言えば、彼女の期待は僕以上だったわけなんだ。
そんな彼女を巻き込んでの居残りって言うのは、本当に心が痛むよ。
「でもやな。よぉ考えたら、あんた成績えぇやないの?」
「………そう言えばそうだったね」
「じゃあ、居残り補習なんて意味ないんやあらへんの?」
「言われてみれば、あまりないね」
自慢じゃないが、僕は成績が良い。
人間的には欠陥だらけでどうしようもない奴なんだけど、幸運な事に勉強に関しては才能があったらしい。いや、どっちかと言うと記憶の才能かもしれない。結局、勉強なんてものは脳に覚えさせる事だ。
頭が良い人、と言うのはその覚えさせた事を上手く使える人だと思う。僕は生憎、そういう事は下手だ。結局、テストの時にしか有効活用出来ず、その他の事項において活用される事はあまりない。
故に、僕は頭は良くない、と結論付けられる。薫のように聡明な人になってみたいね。彼女は覚えた事をいろんな場面で上手く使える頭の良い人だからね。……優しくはないけど。
彼女は最愛の人であり、同時に憧れの人でもある。
そんな事を考えつつ、彼女を見ていたらまたはたかれた。
「何をボーッとしてんの!」
「あぁ、ごめん。薫に想いを馳せててね」
その瞬間、彼女は赤くなった。大々的に点火はされてないが、夕焼けの中でもわかるぐらいには赤面中みたい。
「……何、アホな事言ってんの?」
はい、照れ隠し。相変わらずのリアクションだね。
「いや、大真面目さ。あまりに眩しい存在だからね」
そう、眩しい。彼女のように聡明で優しくはないけどたまに優しい女性が側にいてくれる。なんて幸運なんだろうね、僕は。


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