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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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妻を他人に (9) ありがとう-2

 コン、コン――。

 ゆきとZの嵐のようなセックスがようやく終わり放心していると、寝室のドアがノックされZが現れた。
 遠くにシャワーの音が聞こえる。

「Oさん、ありがとうございました……!」
「あ、ああ。ゆきは……?」
「お風呂。一緒に入ろうよって言ったら『ばーか』って言われちゃいました」
「ばーか」
「あはは。あとはお二人の時間ですもんね。僕は先に失礼させてもらいますね。詳しい話はまた後日……」
「あ、ちょっと……。ゆきはそのー……大丈夫だったか?」
「うーん、やっぱり……なんて言うんですかね。すごく罪悪感感じてるのは、ひしひしと伝わってきました」
「そうは思えないほど喘いでいたが……」
「だからこそだと思いますよ。ゆきさんね、ほとんどキスさせてくれなかったんです」
「そうなの?」
「僕がイった後、最後にキスしようとしたら『もう終わりだよ』ってやんわり押し返されちゃうし。二回戦したかったのになあ」

 言われてみればたしかにイチャイチャするような場面はなかったような気もする。あれだけ夢中に見えた行為の中でも、私の存在が妻の片隅に残っていたということか。当のゆきはそそくさとバスルームへ駆け込み、今はシャワーを浴びている。いったいどんな気持ちでいるのだろう。

「でもゆきさん、睨んだ通りエッチな女性でしたよ? 驚いたでしょう?」
「ああ。だから凹んでるんだ」
「ははは。その割にずいぶん興奮してくれたみたいで……」

 ベッドやら床やらに散らばる使用済みティッシュの残骸を見渡して、Zが笑った。腹が立つが、どうにも憎めないやつである。

「次回はもっとキスしてもらえるように頑張ります」
「次があるなんてひとことも言ってないが?」
「たぶんまたすれば、もっと心を開いて色々なプレイができそうな気がします」
「辛すぎるんだが」
「あはは。辛くなりたかったいつでも呼んでくださいね」
「うむ、まあ考えとく」

 偉そうなセリフがなんとも間抜けである。

「しかしもしまた貸し出して、今度はゆきがお前のチンポをしゃぶったりでもしたら多分正気を保ってられないよ」
「ん? フェラならもうしてもらいましたけど?」
「は……? いつ……」
「最初に手マンでイかせた後」
 ああ。私が放心状態だったとき。静かだとは思ったがフェラチオをしていたのか。
「でもあんま慣れてないのかな? 控えめで可愛らしいフェラでしたよ。すぐ終わらせちゃってましたし」
「そ、そうなのか。そりゃまあ、慣れてたら大変だ」
 なにしろ少なくとも十五年はしてないはずなのだから。
「あ、ゆきさんシャワー終わったみたい。じゃあ僕はこれで。ゆきさんによろしくお伝え下さいね!」

 Zは何度も私に礼をいい、さわやかに去っていった。

  *

「は? 興奮?」
「う、うん……ゆきのつまらなそうな顔を見て……めちゃくちゃ興奮してた」
「わ……私、そんなつまらなそうな顔してた……?」
「気づいてなかったの? 心ここにあらずだったよ」
「ご、ごめん……」

 ゆきは謝りつつ、夫の変な告白に思わず吹き出してしまった。

 なんなの?
 どういう心理?
 寝取られ夫の不可解な性癖にはだいぶ精通してきたつもりのゆきだったが、まだまだ理解の及ばない領域があるようだ。おざなりな自分の態度に興奮するという夫の言葉に嘘がないことは、さきほどからゆきの中でビクンビクンと脈打つ小さなペニスが証明していた。
 そう思うと、このまったく気持ちよくない夫のペニスがなんだか可愛く、愛おしく思えてきてしまう。

「俺こそごめん。独りよがりなセックスしてるのはわかってる」

 ふーん、わかってたんだ。
 あまりにめちゃくちゃに腰を振ってくるから、わかってないと思ってた。そして私は、どんなに激しくされても全然気持ちよくなれなくて困ってた。普段はちょっと乱暴なパパのエッチも大好きなのに、今日は全然ダメでそんな自分にショックを受けていた。

「ゆきが気持ちよくなさそうにしてて、申し訳ないと思った。でもそれ以上に興奮しちゃって……」

 申し訳ないのは私も一緒。でも感じてあげなきゃと意識すればするほど私は気持ちが冷めちゃった。
 一生懸命腰を振るパパと、まったく気分が乗らない自分のギャップに、もうどうしていいかわからなくなっていた。

「ううん、私こそごめんね。その……あんまり感じてあげられなくて……」
「やっぱり、感じてなかったんだ……」
「うん…………」

 思い切って本音を言ったらおちんちんがビクンと跳ねた。なにこれ、可愛い。
 もっと言っても大丈夫なのかな?

「ほんとに……全然気持ちよくなかったよ?」

 ビクン、ビクン。
 大丈夫だった。

「気まずいし、早く終わってほしかった」
「ああ、そんなこと言わないで……!」

 ビクン、ビクン。
 やっぱりこういうのが好きなんだ。

「うふふ。だって本当だもん……」
「あぁ! ぁあ……!」

 夫があそこをヒクヒクさせながら激しく突いてきた。

「もう……なんでそうなるの? 変態さん……ぁん……ん、んん……」

 あれ?
 感じてあげなきゃっていうプレッシャーが無くなったからか、ちょっと気持ちいい。ほんのちょっとだけど。

「俺もわかんない。だって……初めてだから、こんな経験……」
「んん、ん……ぁん……」
「でもきっと……ゆきのこと大好きだからだと思う」
「ん、んん……嬉しい……ありがと……ぁん……」

 ゆきは夫にキスをした。

「大好きだよ、パパ」
「気持ちよくないのに?」
「うん。全然気持ちよくないのに、パパのことは大好き」
「あぁ、そんな……全然気持ちよくないなんて……」


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