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きゅっ。
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きゅっ。 〜T〜-2

某ファミレスに子供連れの親子や会社帰りであろうサラリーマンがいる中、ボックス席で隣同士に座る女子高生二人。端から見たら少しおかしな光景が、緊張気味な空気が漂っているおかげで、更におかしなかんじに見えてしまう。
「遅いねぇ…あの二人。」
少し苛立ちを見え隠れさせながらしゃべる香織。
「ん〜、もうすぐ来るんじゃないかな?」
「…あっ!来た来た。」
「ごめん、こっちから約束しといて、すげ〜遅刻。」
手を顔前であわせてすまなさそうに謝る啓斗。もっとも、その仕草は美咲には見えないのだが…。
「ほんと。待たせすぎ。レディー二人を30分も。ねぇ?美咲?美咲も何か言ってやってよ。」
「ま…まぁ、事故とかじゃなかったみたいだし。」
「美咲ちゃん、こっちが俺のダチの凌。」
唐突に紹介しだし、二人に握手させる啓斗。頭の切り換えが変にうまいのはこの人の短所でもあり長所でもあるっていったところか。
「はじめまして。」
お得意の笑顔を初対面の凌に、惜し気もなく向ける美咲に凌の心臓が射ぬかれたことなど美咲には知る由も無かった。
「はじめまして。急に呼び出した形になっちゃってごめんね。」
「いえ…。」
初々しいできたてほやほやのカップルでも見てるような、もどかしい気持ちに耐え切れず
「今日は二人が出会った記念にパァーッと食べようぜ」
「ファミレスだけどね。」
と付け加えながら二人の空気を乱した啓斗の二の腕をひねりながら、香織が今日最高の笑顔を二人に見せていることを、二人は全く気付く筈もなかった。


「はぁ〜…食った食った。」
「啓斗一人で食べ過ぎ。一人で2人前は食べてたのに割勘なんて納得いかない。」
「ほんとほんと。美咲ちゃんからも抗議してやってよ。」
凌も納得いかない様子で美咲に同意を求める。
「あは。楽しい時間を過ごせたから割勘でも文句ないですよ?」
「さぁ〜っすが美咲ちゃん!香織とは言うこと違うねぇ。」
パチンと指を鳴らす啓斗にやれやれ…といった表情の香織。
時計は21:30を回ろうとしているところで閉店前もあってか、ファミレスには数える程しか人はいない状態だった。お店の店員も閉店作業にせわしなく動いているのが見える。
「さて、そろそろお開きにしますか。」
香織がみんなの顔を見渡して言う。
「美咲ちゃん、凌に送ってもらって。」
「ちょ…そんなの聞いてないぞ!?」
小声で抗議するのは凌。
「二人っきりにしてやるっていうんだからありがたく思えよ。」
同じく小声でニヤリと怪しく笑う啓斗。小声であっても、テーブル一台挟んだ距離に座ってる、美咲の聴力抜群の耳には筒抜けだ、なんて男二人にはわかる筈が無い。
「あの…いいですよ。一人で帰れますから。」
「な〜に言ってんの。こういう時は甘えさせてもらうものなのよ。」
「でも…。」
「遠慮しないで?送ってくよ。」
帰り道、一人で帰るには心細いこともあり送ってもらうか悩む美咲に
「送り狼にはなるような男じゃなくて、ヘタレ男だからその辺は心配すんなって。」
不安にさせるんだか、不安にさせないようにしてるんだかわからないフォローを入れる啓斗は満足気。


白杖をかざしながら歩く美咲に対し、凌はどうすればいいのかわからず、おろおろしながら歩いている。無論、美咲がこう一言。
「普通に歩いて下さいよ?そんなんじゃ凌さんがこけちゃいます。」
「だ…だよな。」
格好悪いことこの上ない。生まれてから周りに美咲のような人はいなく、並んで一緒に歩くことなどなかった凌にとっては、しょうがないことだ。


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