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チュー、したい!
【コメディ 恋愛小説】

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第三章 ふるえる肩-1

そして、今。

俺は握りしめていた缶ビールを飲み干すと、コンクリートの床にそっと置いた。

コトリと、音がした。
スクリーンではあの日、彼女と観た映画を上映していた。

主人公の若い兵士が戦場で手柄を立てて、褒美に故郷へ帰る途中だった。
軍用列車に密乗車していた、美しい少女と出会うシーンが再現されている。

モノクロの画面が、かえって新鮮で心を捕らえて離さない。
二人は次々と列車を乗り換え、時間を共にするうちに恋に落ちていく。

だが恋心を打ち明けるまでもなく、二人は別れてしまう。
休暇の期限ギリギリで兵士は故郷にたどり着き老母と再会するが、別れを惜しむ間もなく戦場に向かい、帰らぬ人となる。

農場が広がる地平線に沈む夕日を、じっと見つめる老母の後ろ姿で映画は終わった。

エンドマークの後、場内が明るくなり客が立ち去る中俺は座ったまま、ただの白い布になってしまったスクリーンを見つめていた。

そう言えば、あの日もこうして座っていた。 
彼女が泣きじゃくっていたからだ。

震える肩が、ひどく小さく見えた気がした。


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