投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

陽炎
【ガールズ 恋愛小説】

陽炎の最初へ 陽炎 7 陽炎 9 陽炎の最後へ

陽炎-8

分かってた。
私が春人に対して愛を持ってしまったことくらい…だから苦しかった。
一夜を過ごしてしまったとき、『つき合おう』って言葉を期待した。

「つき合ってた期間が短いほど、期待しちゃうの。未来を見てしまうの」

車の中、姉はぽつりと言った。
今までつき合った中で、春人は一番短く、大した思い出もなく終わった。

だから、あるはずだった未来を期待してしまったんだ。
セフレでもいい。
春人と繋がっていられるなら。
なんて浅はかな考えをした。月も星も太陽も八木のまっすぐな目も…全部眩しくて痛かった。

「人を好きになるとみんな滑稽になってしまうものよ」

姉はそれっきり口を開かなかったし、何も聞かなかった。


馬鹿なことをした。
自分の考え・したこと…寂しかったからじゃない。

春人が好きだった。


久しぶりに逢った元彼の変わらぬ空気と、かっこよさに…心奪われてしまったんだ。





「この前はいきなり帰ってごめん」

「おう」

昼間の公園に春人を呼び出した。
あることを切り出す為。

「もう終わろう、この関係」

春人は視線を下に落としたまま短く答えた。

「………おぉ」

春人の表情からすると分かっていたようだった。

「無理だよ、好きになっちゃうから」

「………」

「もうこの関係は成り立たない」

汗をタオルで拭った。
すると、ようやく春人が口を開いた。

「分かってた、お前が辛そうな顔してたの。悲しそうにどこか遠くを見てたことも。でも繋ぎ止めておきたかった」

私は黙って春人の言葉に耳を傾けた。

「正直なとこ、体の相性は雪乃が一番で、手放したくなくて……ごめん、最低だな」

「……最低な男」

「うん」

「嫌い」

「うん」

「変態」

「え?!それ酷いだろ」

ふふっと小さく笑った。そして私は穏やかに言った。


陽炎の最初へ 陽炎 7 陽炎 9 陽炎の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前