投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

陽炎
【ガールズ 恋愛小説】

陽炎の最初へ 陽炎 6 陽炎 8 陽炎の最後へ

陽炎-7

「あぁ、彼女の忘れ物」

横になりながら春人はそう答えた。

「へぇ、それは失礼」

できるだけ明るく言った。胸の奥をズキズキさせながら…。

ネックレスを見れば、どんな女か大体分かる。色白、小柄でぱっちり目の可愛い女。そして、さっきの電話は彼女から。

私は起き上がり、服を着始めた。その行動に気づき、春人はがばっと起きあがった。

「何やってんの?!」

「帰る」

「はぁ?何で?!」

「明日友達と予定あるから」

「いやいや。つーか今、夜中だし」

「うん、でもあんたも明日彼女と逢うんでしょ?」

「昼から来るし」

「とか言って早めに来たらどうすんの。鉢合わせとか勘弁してよ」

春人は送るっと言ったけど私はそれを断った。

「砂雪に迎えに来てもらうから」

春人はそれ以上何も言わなかった。

「気をつけて帰れよ」

その言葉を背に浴び、部屋を出た。




バタン―…



夏の終わりの涼しい夜。私はただ一人、ひどくやるせない顔をしながら歩いた。そして公園のベンチに座り、携帯を開いた。

「砂雪?悪いけど迎えに来て」

場所を告げると、砂雪は何かを問うわけでもなく、ただ『分かった』と言って電話を切った。


余程とばして来たのか、数分後に砂雪の車が公園前に着いた。
そして走って駆け寄って来て、ぎゅっと私を抱きしめた。

ツンと目頭が熱くなるのが分かった。小さくふっと息がこぼれた。

「……さゅ……き」

「…ばかね」

そう言って姉は背中を軽く叩いた。
私は姉に抱きつき、溢れでる感情を抑えられずにいた。


陽炎の最初へ 陽炎 6 陽炎 8 陽炎の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前